日本の原子力計画の「軍事化」
Iran Japanese Radioが、イランの準「国営通信」といわれているファールス通信の記事、「天野IAEA事務局長が、日本の原子力計画の軍事化の可能性を懸念しない理由」を配信した。
記事の主要な目的は、イランの核開発に対する国際的な包囲網と制裁強化の動きを牽制することにある。しかしここで、興味深いのは、エルバラダイから天野体制に移行して以降、イランに対するIAEAの姿勢が強硬姿勢に変化してきたこと、その一方で「国際社会」が日本の「原子力計画の軍事化」を黙過するような動きがある、と指摘していることである。曰く。
「国際社会は、IAEAのような国際機関に対し、中立性の遵守や公正な裁断を求めている。だが、イランの核問題が国際問題と化して以来見られるものは、私欲や不公正な行動のみである。こうした問題は、確かにエルバラダイ氏がIAEAの事務局長を務めていた時期にも見受けられたが、天野氏がこのポストに就任してからは、いささか異なった配色や気配を帯びてきている。」
「特に、天野事務局長がIAEAのトップに就任して以来、この国際機関の法に外れ専門性に欠けた行動が目立ってきているが・・・イランの核活動を巡る喧騒の狭間で、一部の国は表向きに核兵器製造計画の方向へと、水面下ながらも着実に歩みを進めているようである。もっとも、こうした水面下での活動に対する疑惑は、一度たりともIAEAでの協議の場にかけられたことはない」
「日本も、こうした国の1つであり、自国の原子力政策の方針に則って、核兵器製造は、自国の安全保障に関係する国際情勢にかかっているとしている。だが、このことは、この分野に関する日本政府の措置をめぐる一部の疑惑とともに、日本人である天野事務局長の世界の安全保障に関する懸念材料にはなっていない」
このように述べた上で、記事は「西側のメディアの報告及び、機密報告さらには、日本や西側諸国の政府当局の発言を元にした、13項目にわたる日本の原子力計画の概要」を列記する。これらは、「ある1つの共謀を明確に裏付けるもの」だと。
どこまで「事実」でどこからが「捏造」か?
各自自分で判断しながら読んでみよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本の原子力計画の概要
1. イギリス国防省の機密報告は、日本の原子力計画における逸脱の発生を完全に熟知している。
2. 1967年のCIAに関するある機密報告では、日本の衛星打ち上げ用ロケット・ミューに核兵器が装備されている可能性があると言われている。
3.1994年1月30日、イギリスの新聞サンデータイムズは、「日本は今、核兵器を製造する可能性がある」と伝えた。
4.1967年、当時の佐藤総理大臣によって打ち出された非核三原則は、核兵器の製造を禁じておらず、この兵器の製造は、国際的な状況が日本の国家安全を確保できるかどうかによるとしている。
5.アメリカは常に日本を核を持たない国のよい例として提示している。
6.1967年、日本は、核兵器獲得の利害について検討している。
7.佐藤総理大臣は1965年、アメリカの大統領に、「共産国の中国が核兵器を持つことができるのであれば、民主主義の日本も同様に持つことができるはずだ」と述べている。
8.研究者は、「日本は長年、核兵器製造能力を持ちながら、その実験に関して、地理的な制限を有している」と考えている。
9.韓国は何度となく、核活動の継続における日本の前例のない自由な行動に抗議してきた。
10.日本の産経新聞は、2006年9月20日、「国内の核兵器開発の可能性」として、日本政府内の評価について伝えた。この中では、日本は核兵器製造に3年から5年の時間を要する」とされている。
11.日本には、六ヶ所村という200億ドルの費用をかけた原子力施設がある。日本は現在、(他国で)核兵器製造に使用された燃料の再処理を行っている核兵器を持たない唯一の国である。
日本で再処理される使用済み燃料の量は、各国で再処理されたものを合わせたものよりも多い。この施設は世界最大の再処理施設である。
12.熊本大学の研究者らは、プルトニウム爆弾の爆発を引き起こす物質に関する研究を行っている。日本の爆発物に関する機関は、この研究を公開している。
13.日本は六ヶ所村の原子力施設の完全な稼動を目前にしており、そこでは年間8トンのプルトニウムと、およそ1000個の核弾頭に必要な物質が生産される。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
記事は、「実際、IAEAによって日本の核活動に関して情報統制が行われていること、これに関してIAEA内でまったく対応がとられていないことは、天野事務局長が日本人であることと関係があるだろうか」と結んでいる。
上の1から13の中で「事実無根」、「捏造」と定義できるものがあるとしたら、どれだろう?
残念ながら、私には確信を持ってそう言えるものが一つとして見当たらなかった。
(「2」についての詳しい情報を私は持ち合わせていない。ただ、米国政府・NASAが関与しているのであれば、まったく考えられないこと、ということでもない。誰か一度調べてみてはどうだろう。)
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「原子力基本法改正案に軍事目的が追加」 (2012, 6/20)
・・・
・IAEA天野事務局長、続投へ=イラン核や原発対策が課題 (時事 1/8)
「・・・天野氏は核兵器開発疑惑が深まるイランに厳しい姿勢を取り続けており、欧米諸国を中心に幅広い支持を得ている。早ければ3月の定例理事会で再任が承認され、9月の年次総会で決定する。任期は12月から4年間・・・」
・電力業界、8国立大に17億円寄付 原子力研究者ら指定 (中国新聞 1/4)
Iran Japanese Radioが、イランの準「国営通信」といわれているファールス通信の記事、「天野IAEA事務局長が、日本の原子力計画の軍事化の可能性を懸念しない理由」を配信した。
記事の主要な目的は、イランの核開発に対する国際的な包囲網と制裁強化の動きを牽制することにある。しかしここで、興味深いのは、エルバラダイから天野体制に移行して以降、イランに対するIAEAの姿勢が強硬姿勢に変化してきたこと、その一方で「国際社会」が日本の「原子力計画の軍事化」を黙過するような動きがある、と指摘していることである。曰く。
「国際社会は、IAEAのような国際機関に対し、中立性の遵守や公正な裁断を求めている。だが、イランの核問題が国際問題と化して以来見られるものは、私欲や不公正な行動のみである。こうした問題は、確かにエルバラダイ氏がIAEAの事務局長を務めていた時期にも見受けられたが、天野氏がこのポストに就任してからは、いささか異なった配色や気配を帯びてきている。」
「特に、天野事務局長がIAEAのトップに就任して以来、この国際機関の法に外れ専門性に欠けた行動が目立ってきているが・・・イランの核活動を巡る喧騒の狭間で、一部の国は表向きに核兵器製造計画の方向へと、水面下ながらも着実に歩みを進めているようである。もっとも、こうした水面下での活動に対する疑惑は、一度たりともIAEAでの協議の場にかけられたことはない」
「日本も、こうした国の1つであり、自国の原子力政策の方針に則って、核兵器製造は、自国の安全保障に関係する国際情勢にかかっているとしている。だが、このことは、この分野に関する日本政府の措置をめぐる一部の疑惑とともに、日本人である天野事務局長の世界の安全保障に関する懸念材料にはなっていない」
このように述べた上で、記事は「西側のメディアの報告及び、機密報告さらには、日本や西側諸国の政府当局の発言を元にした、13項目にわたる日本の原子力計画の概要」を列記する。これらは、「ある1つの共謀を明確に裏付けるもの」だと。
どこまで「事実」でどこからが「捏造」か?
各自自分で判断しながら読んでみよう。
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日本の原子力計画の概要
1. イギリス国防省の機密報告は、日本の原子力計画における逸脱の発生を完全に熟知している。
2. 1967年のCIAに関するある機密報告では、日本の衛星打ち上げ用ロケット・ミューに核兵器が装備されている可能性があると言われている。
3.1994年1月30日、イギリスの新聞サンデータイムズは、「日本は今、核兵器を製造する可能性がある」と伝えた。
4.1967年、当時の佐藤総理大臣によって打ち出された非核三原則は、核兵器の製造を禁じておらず、この兵器の製造は、国際的な状況が日本の国家安全を確保できるかどうかによるとしている。
5.アメリカは常に日本を核を持たない国のよい例として提示している。
6.1967年、日本は、核兵器獲得の利害について検討している。
7.佐藤総理大臣は1965年、アメリカの大統領に、「共産国の中国が核兵器を持つことができるのであれば、民主主義の日本も同様に持つことができるはずだ」と述べている。
8.研究者は、「日本は長年、核兵器製造能力を持ちながら、その実験に関して、地理的な制限を有している」と考えている。
9.韓国は何度となく、核活動の継続における日本の前例のない自由な行動に抗議してきた。
10.日本の産経新聞は、2006年9月20日、「国内の核兵器開発の可能性」として、日本政府内の評価について伝えた。この中では、日本は核兵器製造に3年から5年の時間を要する」とされている。
11.日本には、六ヶ所村という200億ドルの費用をかけた原子力施設がある。日本は現在、(他国で)核兵器製造に使用された燃料の再処理を行っている核兵器を持たない唯一の国である。
日本で再処理される使用済み燃料の量は、各国で再処理されたものを合わせたものよりも多い。この施設は世界最大の再処理施設である。
12.熊本大学の研究者らは、プルトニウム爆弾の爆発を引き起こす物質に関する研究を行っている。日本の爆発物に関する機関は、この研究を公開している。
13.日本は六ヶ所村の原子力施設の完全な稼動を目前にしており、そこでは年間8トンのプルトニウムと、およそ1000個の核弾頭に必要な物質が生産される。
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記事は、「実際、IAEAによって日本の核活動に関して情報統制が行われていること、これに関してIAEA内でまったく対応がとられていないことは、天野事務局長が日本人であることと関係があるだろうか」と結んでいる。
上の1から13の中で「事実無根」、「捏造」と定義できるものがあるとしたら、どれだろう?
残念ながら、私には確信を持ってそう言えるものが一つとして見当たらなかった。
(「2」についての詳しい情報を私は持ち合わせていない。ただ、米国政府・NASAが関与しているのであれば、まったく考えられないこと、ということでもない。誰か一度調べてみてはどうだろう。)
「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「原子力基本法改正案に軍事目的が追加」 (2012, 6/20)
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・IAEA天野事務局長、続投へ=イラン核や原発対策が課題 (時事 1/8)
「・・・天野氏は核兵器開発疑惑が深まるイランに厳しい姿勢を取り続けており、欧米諸国を中心に幅広い支持を得ている。早ければ3月の定例理事会で再任が承認され、9月の年次総会で決定する。任期は12月から4年間・・・」
・電力業界、8国立大に17億円寄付 原子力研究者ら指定 (中国新聞 1/4)
「・・・8国立大が、電力会社や原子炉メーカー、核燃料加工会社など電力・原子力業界から2011年度までの5年間に計約17億4400万円の寄付を受け取っていた・・・。
・・・寄付金はほとんどが提供先を指定されており、原子力工学などの研究者に渡った。原発の新たな安全基準を検討する原子力規制委員会の会合に参加する研究者も含まれていた。原子力規制行政に詳しい専門家からは「国の安全規制に影響する危険性があり、徹底的な検証が必要だ」との声が上がっている・・・。
・・・受入額が最も多かったのは東大の約5億6千万円。東北大の約4億1700万円、名大の約2億5100万円、京大の約2億1200万円が続いた。東工大は約1億400万円、九大約8300万円、阪大約7900万円、北大約3800万円だった。
大学関係者らによると、寄付金は学会に参加するための旅費や備品の購入のほか、寄付講座の開設に使われたという。 寄付したのは原発を持つ東京電力や日本原子力発電など電力8社のほか、電力会社関連企業・団体、三菱重工業や日立GEニュークリア・エナジーなどの原子炉メーカー、原子燃料工業などの核燃料加工会社。 東電は11年3月の福島第1原発事故後は原則寄付をやめている」
・・・寄付金はほとんどが提供先を指定されており、原子力工学などの研究者に渡った。原発の新たな安全基準を検討する原子力規制委員会の会合に参加する研究者も含まれていた。原子力規制行政に詳しい専門家からは「国の安全規制に影響する危険性があり、徹底的な検証が必要だ」との声が上がっている・・・。
・・・受入額が最も多かったのは東大の約5億6千万円。東北大の約4億1700万円、名大の約2億5100万円、京大の約2億1200万円が続いた。東工大は約1億400万円、九大約8300万円、阪大約7900万円、北大約3800万円だった。
大学関係者らによると、寄付金は学会に参加するための旅費や備品の購入のほか、寄付講座の開設に使われたという。 寄付したのは原発を持つ東京電力や日本原子力発電など電力8社のほか、電力会社関連企業・団体、三菱重工業や日立GEニュークリア・エナジーなどの原子炉メーカー、原子燃料工業などの核燃料加工会社。 東電は11年3月の福島第1原発事故後は原則寄付をやめている」