2013年1月15日火曜日

フランスのマリへの軍事介入: ~「対テロ戦争」? それともトゥアレグ遊牧民族の民族自決と自治の圧殺?

フランスのマリへの軍事介入: 
~「対テロ戦争」? それともトゥアレグ遊牧民族の民族自決と自治の圧殺?

フランス社会党政権によるマリへの空爆・虐殺が激しさを増している。
 14日のNHKの報道やその他の外信よると、オランド政権は反政府武装勢力の南進を阻止するにとどまらず、昨春に「独立宣言」が発せられたマリ北部の主要都市への空爆を含めた攻撃を強めると宣言している。
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・「フランスのルドリアン国防相は、武装勢力による進攻を阻止するため、前日に続いて、13日も中部の主要都市で空爆を行ったことを明らかにしました。 そのうえで、「テロリズムを根絶する」として、武装勢力がすでに制圧している北部に対しても攻撃を拡大する考えを示しました」(NHK)
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 このフランスによるマリへの軍事介入をどのように考えれるべきか?
 また、一昨年のコートジボワールへの軍事介入に続く、フランスの連続的な旧植民地に対する軍事介入は、今後どのような結果をマリや周辺諸国、さらにアフリカ大陸全体、ひいては国際社会にもたらすのか。 以下、この問題に対する私見を簡潔に述べてみたい。

1 仏米英による「対テロ」共同軍事作戦
 「フランスのマリへの軍事介入」とメディアは表現し、私も便宜的にそう書いているが、今回の軍事介入がすでにイギリス軍と米軍を含めた仏英米の共同軍事作戦として展開されていることを最初に確認しておく必要がある。

 イギリスに関しては、ガーディアン紙やBBCがすでに報じているように、フランスの前方展開に対する輸送・兵站などの後方支援活動を行うことが決定されている。 また、20日の大統領就任式までは表立った動きができない米国は、アフリカ司令部・CIAを通じた後方支援・情報・通信面によるフランス軍に対する支援を公式に表明し、今回の軍事介入にすでに実戦的に関与している。
(米軍・CIAは、ソマリアにおけるフランスの「諜報員救出作戦」=アル・シャバーブとの戦闘にも関与している。)
・France’s defense minister says the United States has "seconded" its intervention, reportedly providing intelligence as well as transportation and communications support.
・In a letter to Congress, Obama disclosed U.S. forces provided support to French troops in a failed effort to recover a French secret agent captured by Somali militants.(Democracy Now! 1/14)

 サハラ砂漠の(半)遊牧民族トゥアレグの領域、民族自決、そして自治
 仏米英軍によるマリ軍事政権に対する軍事支援および軍事介入の背景を理解するためには、マリ北部の〈先住民族〉、「砂漠の民」トゥアレグの民族史を理解しておかねばならないだろう。

 一部ではトゥアレグ=イスラーム教徒=過激派=テロリストといった誤った印象を植えつける報道が意図的に流布されているが、そうした民族的ステレオタイプと差別・偏見を払拭することから始める必要がありそうだ。 とりわけ、対テロ戦争国家連合のメディアが発信する「情報」を垂れ流すことしかしない日本の主要メディアと、その「情報」にさらされ、感化されがちな私たちは特にそう言えそうである。

 昨春、マリのトゥアレグの武装勢力が、azawad(英語表記)と呼ぶ北部地域の「独立宣言」を発したが、トゥアレグにとってこの地域は居住するほんのごく一部の地域でしかない。
 つまり、19世紀から20世紀初頭におけるヨーロッパ列強による「アフリカ分割」=植民地支配の結果、トゥアレグの存在を黙殺しながら人工的に構築された「マリ」という近代国家の国境を前提にした「境界線」は彼/彼女らにとっては無効なのである。→ サハラ砂漠の中心部から東西南北に広がるトゥアレグの領域(テリトリー)については、左のサイトにある地図で確認できる。
(Desert Dwellers: Today the heart of the Tuareg region is divided among four nations. Rich uranium deposits located on their grazing lands remain a contentious issue with the Niger government. /National Geographic)

 上の地図の地域をほぼ網羅する形で、トゥアレグには7つの地域にまたがる独自の統治機構・連合組織と政治組織があるという。それらを列挙すると以下のようになる。サイトに掲載されている各地域の色を参照しながら確認してほしい。
  • 1 - Pink (top right): Azger Confederacy: located in Libya & Algeria: includes the Libyan oases of Ubari & Ghat.
  • 2 - Pink (lower right): Ayer Confederacy: located in Niger, also written Aïr, Air or Ayr.
  • 3 - Pink (left): Awellimedden & Kel Athram Confederacy: located in Mali, includes Timbuktu.
  • 4 - Yellow (top): Ahoggar Confederacy, located in Algeria: includes the oasis of Tamanrasset.
  • 5 - Yellow (middle, below 4): Tkerekrit Confederacy: located in Niger & Mali: includes the oasis Agadir and Tawa.
  • 6 - Light-Blue: Tamezgda Confederacy, located in Niger.
  • 7 - Orange (below 4): Agres [Kel Gress] Confederacy: located in Niger and Mali.


  • 3 対テロ戦争の民族的性格
     現在のマリ、ニジェール、リビア、アルジェリアの他にもマリと国境を接するモーリタアやファソなどにもトゥアレグの居住地域があると言われているが、いずれにせよ以上の情報を見るだけで今回の軍事作戦の背景に、各国の既存の国境線を越えたトゥアレグの民族運動が存在することがわかるだろう。 それは実に広大なサハラ砂漠に広がっている。
     現在、その政治的拠点になっているのがマリの北部地域とニジェールのトゥアレグのテリトリーなのである。

     アフリカ大陸屈指の石油産出国、ニジェールのトゥアレグのテリトリーにはウラン鉱脈が眠り、マリはアフリカ大陸第三の金の産出国だ。このニジェールの石油とウラン採掘、マリの金採掘によって莫大な利益を得てきたのがフランス、イギリス、米国、カナダなどを拠点とする石油メジャー、多国籍企業であることは言うまでもない。→マリの金採掘に関する情報はこちらを参照のこと。

     こうした①石油・天然ガスなどのエネルギー資源や鉱物資源開発、また②アフリカン・パーム(やし)のプランテーションや、③先進主要国の「二酸化炭素削減」のためと称して行われている「植林」活動のための土地・農地強奪などをめぐり、「21世紀のアフリカの再分割」とも言える覇権の再形成が、フランスを始めとする旧植民地宗主国に米国・カナダ、さらに中国・ロシアなどを加えながら展開されてきた。それはここ数年、とりわけ急激な中国のアフリカ進出の煽りを受ける形で激化する一方になっている。

     しかし、欧米の左翼的分析家、研究者、活動家に顕著なのだが、アフリカにおける対テロ戦争を石油メジャーや多国籍資本の利害を中心に論じることは、問題の一つの側面を捉えているに過ぎない。
     たとえば、旧宗主国フランスおよびマリ中央権力に対するトゥアレグの民族自決・自治を求める政治的闘争はマリ「独立」直後の1960年代初頭から、武装闘争をはらみながら戦われて来た。 マリやニジェールに示されるように、欧米資本、また中国その他の開発戦略に抵抗するアフリカの数多くの抵抗運動の背景には、各国家内の少数民族の民族的権利を求める闘いが存在することを見落とさないようにしたい。
    →マリ「独立」後、昨年までに至るトゥアレグのフランス及び中央権力に対する叛乱の歴史の概略についてはこちらを参照していただきたい。

    ⇒「マリを「第二のソマリア」にしてはならない ~フランスの軍事介入が失敗に終わる理由」につづく
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    仏軍、マリ北部を空爆 イスラム勢力は逃走 (AFP 1/14)
    「・・・フランスは介入3日目となる13日、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の武装勢力のガオの拠点を空爆。キガリでは反政府勢力が弾薬や燃料を貯蔵していた場所を攻撃した。
     空爆にはラファール(Rafale)戦闘機、ミラージュ(Mirage)戦闘機、ガゼル(Gazelle)ヘリコプターが使用された。教師だというガオの住民は、空爆で拠点を破壊された武装勢力は1人残さずガオから逃走したと話した。
     10か月前からイスラム過激派の苛烈な支配下にある北部の砂漠都市トンブクトゥ(Timbuktu)では、住民の間で仏軍戦闘機の到来を心待ちにする声が聞かれた。 国連安全保障理事会(UN Security Council)はフランスの要請を受けて14日にマリ情勢について協議する・・・」

    安保理がマリ情勢協議 各国、仏空爆に理解
     国連安全保障理事会は14日、西アフリカ・マリのイスラム過激派に対するフランス軍の空爆や、過激派とマリ軍の戦闘について非公開協議を開いた。フランスのアロー国連大使は協議後、記者団に「安保理の全メンバーがフランスの(空爆の)決断に支持や理解を表明した」と述べた。  マリ情勢に関する安保理協議は空爆後初めてで、フランスが開催を要請した。アロー氏は「われわれ(フランス)が合法的に国連憲章に基づき、マリ当局の要請を受け行動していると安保理全メンバーが認めた」と述べた。

     安保理は昨年12月、マリ周辺国で構成するアフリカ国際マリ支援部隊(AFISMA)の軍事介入を認める決議を採択した。国連憲章51条は、安保理による措置の前に各国が集団的自衛権を行使することを認めている。 アロー氏は、AFISMA派遣決議を早く履行することが必要とも述べ、フランスによる軍事行動から安保理決議に基づく措置への早期移行を求める姿勢を示した。 マリではイスラム過激派などが昨年3月のクーデターをきっかけに北部を掌握し、数日前から暫定政府支配地域に南下。マリ軍との戦闘が激化した。(ニューヨーク=共同)
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     国際法上の問題で言えば、今回のフランスによる軍事介入が、いかなる国際法上の主体から承認され、フランスが「授権」したのか?という根本的な問題がある。 もっとわかり易く言えば、国連安保理はいつ、どの会合で、フランスに対し軍事介入を許可したのか、という問題である。

     上の記事にもあるように、昨12月のマリをめぐる国連安保理決議は、(それ自体非常に問題なのだが)「アフリカ国際マリ支援部隊(AFISMA)の軍事介入を認める決議」だったのであって、これに先立ちフランスが単独軍事介入し、米英がそれに続くことを承認したものではない。
     こんなことが許されるなら、安保理が地域機構による「軍事介入」を承認しさえすれば、それがフランス・米国・英国であれ中国・ロシアであれ、常任理事国による単独の軍事介入が国際法上認められることになってしまうではないか。

     安保理常任理事国は、安保理の決議内容と、安保理としての意思決定における手続き的民主主義を厳格に遵守すべきである。今回のオランデ社会党政権の行動は、安保理構成国がどれ一つとしてフランスを批判しない/できないだけの話であって、明らかに安保理決議と「国連民主主義」に違反した暴挙だと言うべきである。

     これについては、〈対テロ戦争と「保護する責任」の安保理的規範化を通じた、米英仏そして中ロによる世界人権宣言」の死文化と、国連憲章第六章および七章の空洞化・形骸化〉の問題として私はすでに論じているので、関心のある人は『日米同盟という欺瞞、日米安保という虚構』および『脱「国際協力』にある拙文を参照していただきたい。
     早い話、「国際の平和と安全/安定」を「維持」すべき安保理常任理事・核軍事五大国が、対テロ戦争の名の下に「国際の平和と安全/安定」を撹乱、破壊し、その結果「不安定」地域、「破綻国家」なった地域、諸国を自国の武器生産と軍事援助のはけ口とし、現代版覇権争奪戦を展開しているのである。無茶苦茶だ。

    フランスによるマリ軍事介入を支援=米国防長官
    「・・・パネッタ米国防長官は14日、フランス軍によるアフリカ西部マリでの空爆作戦は国際テロ組織アルカイダによる拠点確立阻止という、より重要な目標にとって決定的に重要との認識を明らかにし、それはひいてはアルカイダによる欧州ないし米国攻撃を防止する一助になると述べた・・・。
    ・・・米国防総省高官によれば、米国はフランスとの軍事情報共有化を開始した。またフランス軍戦闘機によるマリでの活動を支援するため、フランス政府からの追加的な情報やロジスティクス(兵站)上の支援要請の受け入れを検討中・・・。
    ・・・パネッタ長官は・・・フランス軍が攻撃の標的にしている「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」は米国とその同盟国を攻撃できることを長期目標としていると指摘した・・・。
     
     「アルカイダには米国ないし欧州で攻撃する当面の計画はないかもしれないが、究極的にはそれが彼らの目標だ。アルカイダが作戦の拠点を確立する際はいつでも懸念している」「それが、AQIMがこのような影響力を持たないようにするため、われわれがいま行動しなければならない理由だ」。
    ・・・フランス支援には物資の空輸、ロジスティックス上の援助、そして情報上の支援が含まれる・・・。他の当局者によれば、米国は追加的な人工衛星情報の提供や、無人偵察機の提供の可能性を検討している・・・。
    ・・・長期的には、米国とその同盟国はアフリカ諸国が軍事力を強化し、自前で自国の安全保障を確保できるよう手助けしたいと希望している。しかしパネッタ長官は、フランスの軍事介入を称賛し、マリ北部の武装勢力が支配地域を拡大し始めた時からそうした介入が必須になったと強調した・・・。
    ・・・マリ北部でのAQIM根拠地の確立が可能になったのは、リビアのカダフィ政権崩壊も一因だ。カダフィ政権崩壊の結果、武器が流出し、武装勢力がリビアからマリに流出した」(WSJ)

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    宮崎で日米共同訓練 岩国のFA18参加
     在日米軍再編の戦闘機訓練移転に伴う日米共同訓練が14日、宮崎県新富町の航空自衛隊新田原基地で始まった。同基地での実施は2009年2月以来5回目。  九州防衛局によると、米軍岩国基地(山口県)に所属するFA18戦闘機6機と、パイロットや整備士など計約90人が参加。空自側からは新田原基地所属のF4戦闘機が参加し、四国沖の空域で、4対4などの戦闘訓練を18日まで行う。
     参加した海兵隊のピーター・マッカードル中佐は訓練について「日米の技量を上げ、相互理解の向上を図るのが目的」(??)と説明。「特定の地域や事態を想定したものではない」と話した。(共同)