2013年2月6日水曜日

進化する琉球独立論

進化する琉球独立論

 私は琉球独立論の支持者の一人であるが、昨日、共同通信が気鋭の琉球独立論者であり、友人の一人でもある松島泰勝氏の非常に興味深いインタビュー記事を配信した。

 民主党政権でも、自民党政権でも「普天間問題」や「オスプレイ問題」のみならず、「琉球の一揆」を解決できる見込みはない。
 
 では、どうするのか? 独立しかない!
 今日、琉球独立論は、とりわけ若い世代の琉球人に徐々に、しかし確実に広がっているように見受けられる。松島氏も記事の中でそのように語っている。

 「パレスチナ問題」と呼ばれるものが、実は「イスラエル問題」であるように、「琉球問題」も実は「ヤマト問題」だと言うべきかもしれない。
 「本土による琉球差別」がしきりに語られる今、問われているのはむしろ「私たち」の側なのではないか。

 琉球独立論者の主張、その理論を「私たち」は真剣かつクリティカルに分析し、「琉球独立の道」をともに議論すべき時を迎えているようである。
 以下、松島氏主宰のブログ、「ゆいまーる琉球の自治」より転載する。

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 昨日全国各地の「地方紙」に掲載された私のインタビュー記事をご紹介します。琉球独立に関する議論がさらに盛んになればと思います。

 琉球の植民地支配に対する様々な問い、抵抗の一つに琉球独立運動があり、現在の琉球の日米に対する抵抗、異議申し立てはだれも止めることはできません。
 また「学者が琉球独立を語らない」というタブーを破り、学問的にも成立する議論にすべく、琉球民族の仲間と話し合っています。インタビュー記事にしてくれた石山さんに感謝します。

―昨年出版の著書「琉球独立への道」で沖縄の独立を学術的に論じた。これまでの独立論は「居酒屋談義」にすぎない印象だったが。

「米軍基地負担の軽減がいっこうに進まない中、具体的な研究は進んでいて、一般の琉球人も参加する『琉球独立総合研究学会』が5月発足の準備を進めている。基地をなくすだけでなく、経済、文化にわたる植民地的状況から脱する方法を考えるとこの道に至る」

―興味深いが、現実的な選択肢だろうか。

「国連憲章や国際人権規約は人民の政治的自己決定権を認めており、琉球が決めれば独立に進むんです。住民投票で過半数の賛成を得て独立宣言を出し、国連に加盟申請する。パレスチナのように時間をかけて国家として承認してくれる国を増やせばいい。
 その過程で日本の承認はいらない。イスラエルはパレスチナを承認していないけれど、国連は昨年11月、パレスチナを『オブザーバー組織』から『オブザーバー国家』に格上げした。太平洋のパラオは人口わずか2万人だが、1994年に独立した。スコットランドは英国からの独立を問う住民投票実施を決めている」

▽「非自治地域」
―独立が沖縄の多数派意見になり得るのか。

 「琉球大の2007年の県民世論調査で独立支持は21%だったが、今はもっと高いはず。国連の脱植民地化特別委員会の『非自治地域』リストにはグアムなど16地域が載っている。県議会がリストへの登録要請決議を採択することも必要になるでしょう。フランス領ポリネシアの議会は、11年にそういう決議を出している」

―自立は可能か。
「沖縄県が徴収している国税と地方税の総額は約3900億円。本社が県内ない企業への課税権は今はないが、独立すれば課税対象にできる。現在の財政規模よりいったん少なくなったとしても使途は自由になり、本当に有効な経済政策を打ち出せる。
 復帰後、沖縄県には振興開発で総額約10兆円が注がれたが、IT特区などの政策はほとんど失敗した。基地を押しつけるためだけで、中央官庁が中途半端な政策を採用してきたからだ」

「既に返還された米軍基地跡地では税収、雇用とも飛躍的に伸びている。那覇の新都心おもろまちなどがいい例。基地労働者の給与など基地関連収入は県民総所得の約5%まで低下、基地労働者は県就労者の約1・5%にすぎない。
 一方、基地は県面積の1割を占め、交通の要所に陣取っている。なくなった方が経済効果は大きいんです

▽ASEANに加盟
―独立後、「琉球国」の外交・安保政策は?
「太平洋島しょ国フォーラム(PIF)、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟し、安保は非同盟、非武装で行く。日本とは友好関係を築き、両国民が互いに自由に往来、就労できるようにする。今は琉球の位置が基地を置く理由にされているが、この『地理上の不幸』を幸福に変えたい。かつて交易で栄えた琉球王国のように」

「たとえば、与那国島と台湾との距離はわずか約110㌔だが、定期船もない。国際港開設を何度か日本政府に申請したが、港の大きさなどから税関や入管を置くことはできないと却下されてきた。戦後の一時期、与那国は台湾との交易で人口が2万人近くに達したが、今は2千人未満で自衛隊誘致の話が出ている。そういう状況に追い込んだかのよう。地政学的有利さは中央集権では活かせないんです」

―非武装では中国の軍事的野心を刺激するとの指摘がある。

「国際法が整備された現代において、そのような想定をすること自体がおかしい。チベットなど既に国内に多くの民族問題、独立運動を抱える中国が琉球に手を出すはずもない。ただ、あまり経済的に中国に依存しない外交姿勢は必要です」

―尖閣諸島の領有権問題については?

「尖閣はかつて琉球人が中国に通うときの航路標識代わりに使い、中国以上に琉球との歴史的関係が深い。日本はその琉球を併合して尖閣を領有しているわけだが、国有化で危険な状況を作り出した。武力衝突が起きたら戦場になるのは琉球の島々。
 尖閣を戦争の起点とせず、平和を創造する起点にする方向で解決を探るべきです」
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まつしま・やすかつ 64年、沖縄県・石垣島生まれ。気象台勤務の父の転勤で同県・南大東島、与那国島などで育つ。97~2000年に在グアム総領事館、在パラオ大使館で専門調査員。著書に「沖縄島嶼経済史」「ミクロネシア」など。

共同通信編集委員室・石山永一郎

【参考サイト】
安倍内閣に対する沖縄の「建白書」全文 (「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」事務局)

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「琉球独立」を議論 研究学会、5月15日設立
 琉球の島々に民族的ルーツを持つ人が、琉球独立を前提とした研究や討論、国際機関への訴えなどの取り組みを進める「琉球民族独立総合研究学会」が5月15日、設立される。設立準備委員会は、研究者だけでなく広く一般から、設立発起人や会員としての参加を呼び掛けている。独立を前提に、琉球にルーツを持つ人を参加対象とした議論の場ができるのは初めて。

  宜野湾市内で3月31日に開かれた準備会の会合にネットで参加した共同代表の松島泰勝・龍谷大学経済学部教授(49)は「オール沖縄でオスプレイに反対する状況で日本政府による配備押し付けというやりたい放題の中、琉球人が島で平和に生きるため、独立の選択肢を具体的に議論しないといけない」と語った。

  学会設立後は、年に2回程度の学会を開催し、世界各国の独立経過や事例を研究、独立前後の政治経済やアイデンティティーなどを議論する。実践として国連脱植民地化特別委員会への琉球登録などを目指す。独立国となった太平洋諸国の人々との研究交流や連携も進める。

  友知政樹・沖縄国際大学准教授(39)は「会員を琉球民族に限定するのは、自分たちで考えることが真の解放の一つのプロセスになると考えるからだ。琉球の主権回復、自己決定権獲得のため、一つの方法として独立が必要だと考えた」と経緯を振り返った。(琉球新報)

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社説[安倍首相初来県]何のための沖縄訪問? (沖縄タイムス 2/3)
「・・・全首長らの東京要請行動や安倍首相の来県を経て可視化されたのは「安保の負担」に対する本土側の当事者意識のなさだ。オスプレイ配備について知事は首相に「県民の不安感の払拭(ふっしょく)に力を入れてほしい」と要請した。
 が、県民の反発は「危険な欠陥機」の配備という側面が全てではない。戦後60年余を経てもなお、最新鋭機を沖縄に配備し軍事要塞(ようさい)と位置づける。負担軽減を求め続ける県民の声を無視して機能強化を図る姿勢への異議申し立てだろう。
 沖縄を再び「本土防衛の砦(とりで)」とするわけにはいかない。」
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「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「基地と原発、振興開発と住民の〈自己決定権〉
⇒「パレスチナと沖縄を結ぶ――民族自決権と開発