2012年12月29日土曜日

「トモダチ作戦」参加の米軍兵士らの東電提訴をめぐって

「トモダチ作戦」参加の米軍兵士らの東電提訴をめぐって

 フジテレビ系(FNN)が、トモダチ作戦参加の米軍兵士ら8人が、被ばくを理由に東電を提訴したというニュースを流した。
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  東日本大震災の救援活動を行う「トモダチ作戦」に参加したアメリカ軍兵士ら8人が、「原発事故について誤った情報をもたらされ、被ばくした」として、東京電力に対し、損害賠償などあわせておよそ189億円を求める訴訟を起こした。
 サンディエゴの裁判所に、21日提出された訴状によると、「トモダチ作戦」に参加した兵士8人は、福島第1原発の事故について、「東京電力が日本政府と共謀し、現地が安全であるかのように印象づけたうえ、不完全で誤った情報を発信したため、被ばくした」としている。兵士らは損害賠償のほか、医療費をまかなう基金設立など、あわせて2億2,000万ドル(日本円でおよそ189億円)の支払いを求めている。(12月28日)
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 現段階において入手できる情報は非常に限られており、そのことを前提に上の記事のみに基づいて言えば、この米軍兵士たちの「提訴」には様々な疑問が残る。
 一点目は、「東京電力が日本政府と共謀」したというのに、なぜ日本政府を提訴せず東電のみを相手に訴訟を起こすのか?
 二点目は、米軍のよる「トモダチ作戦」は、言うまでもなく米国政府(オバマ政権)の意思決定に基き、米軍のアジア・太平洋司令部および在日米軍司令部の指揮の下に行われた、いわば軍事作戦である。
 であるにもかかわらず、兵士たちはなぜ米国政府、つまりオバマ政権および作戦指揮にあたった両司令部の責任者たちを提訴しないのか?

 三点目は、今後のニュース情報に求められている点にもなるが、これらの兵士たちが、いつ、どこで、どのような作業を行っている間に、どの程度被爆したのか、これらについて明らかにされていない点である。
 この三点目に関連し、四点目として、部隊として福島で「支援活動」を展開していない米軍兵士が、もしも作戦展開中に福島県外で被爆したのであれば、県外の被災者、および福島県内外で活動していた自衛隊員、また支援に入ったボランティアたちなども、当然、被爆した可能性が高くなる。
 もっと言えば、県外の被災者、自衛隊員、ボランティアが、まるで被爆していないことを当然のことのように考え、振舞ってきた、日本政府、防衛省・自衛隊、各自治体、そして主要メディアのあり方が、この問題を通じて改めて、また根本的に問われ直されねばならないのではないか。

 もしも、兵士たちが被爆したのであれば、言うまでもなく兵士たちは被害者である。賠償・補償を受けて当然だと私は思う。しかし、「トモダチ作戦」を遂行した日米両政府、および米軍の法的責任を問わずして、東電のみを相手に訴訟を起こし、莫大な賠償・補償金を取ろうというのは筋違だろう。

 ともあれ、地上展開においては大したことをしていない米軍兵士が、福島県外で被爆したというのであれば、福島県民は言うにおよばず、各地から支援に入ったボランティア、自衛隊、消防団、警察関係者なども、米軍兵士などよりははるかに、はるかに被爆しているはずである。

 日本政府、防衛省・自衛隊、各県警・消防団、各自治体は、現地に入った者たちの被曝検査をどこまでしたのか。 そこに情報隠蔽はなかったのか。
 検証は何もされていない。 今回の案件の今後の展開を通じ、改めてこれらのことが問われることになるだろう。
 検証が急がれる。


「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「パレットのデブリス① 」(2012, 2/4)
オバマ政権および米軍が、「3・11」直後より福島第一惨事の状況を詳細に調査・分析していたのは周知の事実であり、米軍兵士の被爆責任は、東電と日本政府の共謀というより日米両政府、米軍・防衛省-自衛隊官僚・東電による共謀というべきである。

⇒「米軍は日本を守らない---「日米安保という虚構」 」 (2011,4月まで)
 今ではもう「歴史的文書」の観さえあるが、「トモダチ作戦」とはいったい何のための、どのような「作戦」だったのか、その検証と考察を真剣に行う段階にきている。
 海外であれ国内であれ、自然災害では人命の救済が第一義の目的とされるため、もっとも「機動的」とされる軍の出動が国家・軍によって正当化される。機能的・合理主義的思考のみに足をすくわれてしまうと、私たちの多くもそのように考えがちになる。

 しかし、米国政府や米軍はタダでは動かない。むしろ一般市民・納税者としては、「トモダチ作戦」によって米国・米軍がどのような「見返り」を得ようとするのか、どれだけ利益をむさぼろうとするのかを中心に考えるべきだろう。
 米軍に依存しない「防災体制」の構築はいくらでも可能なのだから。

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アメリカが日本に4億2100万ドルの兵器売却を承認
   アメリカ国防総省が、日本へのイージス艦ミサイル防衛システムと関連機器の強化に向けた武器売却を承認しました。
 ロイター通信によりますと、アメリカ国防総省は、議会に対し、「日本のミサイル防衛力の強化のために、4億2100万ドルの武器売却を承認した」と伝えました。他国への武器売却を担当するアメリカ国防安全保障協力局は、「日本は、自国の防衛システムの強化を我々に要請している」としています。

 ロイター通信はまた、「アメリカ議会は、30日以内にそれを受け入れるか否かを決定する」と報じました。もし議会に承認されれば、ロッキード・マーチンが主要請負業者となり、新レーダーシステムなどを含めた設備が日本に売却されることになります。こうした中、日本自衛隊は最近、北朝鮮の脅威に対抗するため、ミサイル防衛システムを配備しています。(Iran Japanese Radio 2012/12/11)