2012年1月30日月曜日

「ホットスポット」の除染と汚染廃棄物の処理問題


 昨日、自治会の役員会があった。今年は、輪番制によって我が家も自治会の新役員となった。
どこにでもある何の変哲もない自治会だが、昨年来、それまでには考えられもしなかった「議題」が一つある。周辺地域の放射線量の計測をどうするか、という問題だ。
 我が家は、首都圏の「ホットスポット」と呼ばれてきた「スポット」の近隣にある。辺りには保育園、小学校、中学校に公園があり、林立するマンションにも、乳幼児から中学生まで、子どもたちがいる。だから、福島と同じように、これらの除染が重大問題として持ち上がっている。
 だが、国や自治体は公共施設の除染しかやろうとしない。汚染土壌の処理問題とともに、民有地・家屋・マンションの除染を誰が責任を持ってするのかということが首都圏の「ホットスポット」がかかえる大きな問題となっているのである。

 しかし除染の問題以前に、深刻な問題がある。放射線量の計測が、ごく限られた場所しか行われていないことだ。民家やマンション、私道や私有地の計測を、国や自治体は行わない。線量計を貸し出しはするが、担当の課の職員が直接やってきて測量することはない。だから基本的に「市民任せ」になっているのが実情なのだ。

 去年、あるマンションの放射線量の測定が議題に上った。自治体に線量計を借りることになったが、線量計が足らず、順番待ちとなった。その後、理事会から音沙汰が無かったので、昨日の会議で聞いてみた。すると「進展はない」との報告だった。「それは良くない、まずは正確な放射線量を計測することが肝心だ」と提起した。 すると、この提起に賛同してくれた一歳児を持つ別の役員が、自分で計測したと発言した。「0、6」という返事が返ってきた。この数値をどう評価するかは意見が分かれると思うが、妊婦、乳幼児や子どもにとっては決して無視できる値でないことは確かだろう。
 けれども、この数値に対し、自治会が深刻に受け止めるという合意は取れなかった。年齢や家族構成によって、認識は人それぞれになる。結局、正確な測定をどうするかについては、来月から始まる新体制の自治会の「議題」として持ち越されることとなった。

 福島のこともそうだが、首都圏の「ホットスポット」の除染や汚染土壌の処理問題は「地元」以外の人々から忘れ去られた観がある。「当事者」でなければ事態の深刻さを共有することは、なかなか困難である。

 たとえば「ホットスポット」が集中する自治体の一つに千葉県柏市がある。去年の11月、除染をめぐる二回にわたる市の説明会があり、それに参加した人から説明会で配布された資料や当日撮影した写真や映像を送ってもらったことがある。写真を二枚、紹介しておこう。福島の避難区域の再編に伴う「除染事業」や「除染ボランティア」への動員問題を考えるにあたり、「ホットスポット」のそれらについて少し考えてみたい。

 正月明けの毎日新聞千葉版の記事。
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仕事始め:柏市長、放射線対策優先を訓示 当初は「失敗」と総括 /千葉
 

県内の官公庁や、多くの民間企業では4日が仕事始めとなった。
 東京電力福島第1原発事故の影響で比較的放射線量が高い柏市では、秋山浩保市長が幹部職員ら約100人を集め、市の事故当初の対策を「失敗だった」と初めて総括。 放射能汚染と市の人口減少傾向の因果関係も認め、市民の不安解消への取り組みを約40分間にわたり語りかける異例の訓示となった。
 秋山氏は、従来の想定を超えた事故が起き、科学や政府に対する信頼が低下
 市民が「最悪を想定して合理的でなくても納得する放射線対策」を求めていたにもかかわらず、市側が、市民がまだ従来の科学や政府を信頼しているという前提で対応し、市民を納得させられなかったことが失敗の原因と分析。
 さらに、失敗の結果による一部の子育て世代の市外流出や、不動産取引の減少に伴う地元経済への影響などの懸念を表明。 「市民や専門家から評価を受ければ、ピンチがチャンスに変わる。縦割り行政を排し、放射線対策をすべての施策に優先する」と幹部職員を激励した。
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 柏市は、行政側の「失敗」を全面的に認めた。その柏市が、今度は国を全面的に批判している。先週(1/26)の同じく毎日新聞の記事。
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<放射性物質>国の除染補助に千葉・柏市長「ひどい内容」
 東京電力福島第1原発事故に伴う除染で、民間の団体や個人が業者と直接契約した場合は国の補助の対象にならないことについて、千葉県柏市の秋山浩保市長は26日の記者会見で「国は全く現状を分かっていない。ひどい内容だ」と批判した。市長によると、柏市など「汚染状況重点調査地域」を集めた25日の会議で、環境省から「自治体が業者と契約した場合に限り、除染費用を国が負担する」と説明を受けたという。
 柏市内の私立幼稚園・保育園35園が業者に依頼した除染費用5275万円について、市は国に補助を申請する考えだったが、このままでは補助対象外になるという。
 環境省水・大気環境局総務課は「除染は『市町村が実施する』と法律に書いてある通り」とし、民間同士の契約は補助の対象外との立場だ。秋山市長は「同じ考えの近隣の市とも連携し、改善を申し入れる」と話している。【早川健人】
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2/1
 原発立地自治体にせよ、柏市のように150キロ以上原発から離れた自治体にせよ、原発災害と国の原子力行政の被害者という点では同じ立場にある。放射能汚染と除染をめぐり、自治体は崩壊しかねない危機に叩き込まれることになる。とくに柏市の一部の地域では、周知のように、福島県の「避難区域」の放射線量よりも高い数値が計測されている。
 だから、停止中原発の再稼働をめぐる「原発の安全・安心」と「市民の安全・安心」を評価し、議論するにあたり、原発災害が遠隔地の「ホットスポット」を必ずや生み出すことになるという点を、私たちは忘れてはならないと思うのだ。

 私が除染や「除染ボランティア」問題を取り上げるのは、これらの問題解決の具体的・現実的展望が出るまでは、再稼働云々の話を国・立地自治体・東電や電力会社はすべきではない、と考えるからだ(⇒後述)。除染が一向に進まず、しかもその進まない除染、福島以外の地域では国と自治体が財政負担の転嫁合戦をしている除染に、地元住民までが「ボランティア」として動員される/しようというのは、どう考えても理不尽すぎる。

 柏市について言えば、2月5日に「ホットスポット中のホットスポット」がある地域で今年最初の市の説明会があるそうだ。問題になっているのは、学校や公共施設だけでなく、子どもの通学路にもなる民有地(私道・植え込みのある民家・マンション等々の除染/細かい放射線量の計測)である。
 一度は市民から厳しい糾弾を受けた秋山市長は、「同じ考えの近隣の市とも連携し、改善を申し入れる」というだけでは「ユル」過ぎるのではないか。市民・子どもを守るために国と東電に対し、毅然とたたかう姿勢を明確に打ち出すべきだろう。
 柏市の問題については、5日の説明会の報告を待って、改めて考えてみたい。
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柏での移動教室中止 文京区
 東京都文京区は、区立小四、五年生が千葉県柏市にある区の校外学習施設「柏学園」で一~二泊する移動教室を、二〇一二年度は中止することを決めた。福島第一原発事故後、柏市で局地的に高い放射線量が測定されており、保護者から心配する声が寄せられていた。
 一日に開かれた区教育委員会定例会で、区側が報告した。国が除染の財政支援をする「汚染状況重点調査地域」に柏市が指定されたことを受けて、中止を決めたという。代わりに、東京近郊の他地域での日帰り野外体験や校舎内での宿泊体験を各校ごとに行う。
 柏学園での移動教室は、文京区立小の恒例行事。区は昨年七月、同学園で放射線量を測定。同九月には「二泊三日滞在しても、年間被ばく量は国際基準の限度を下回る」として一一年度は全区立小で実施。参加率は86%だった。例年はほぼ全員が参加している。 区内の小学生保護者でつくる「放射能から子どもを守る文京父母の会」は昨年十二月、行き先の変更を求める要望書を区に提出していた。(東京新聞)
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〈「帰還運動」は、やはり、無理がある〉
 一方、福島の川内村。
 崩壊の危機に瀕した福島の原発立地自治体や、今避難区域に残っている人々の立場に立つなら、「帰還運動」の「趣旨」は、おそらく誰もが理解するだろう。しかし現状では、やはり、無理がありすぎる。少なくとも時期尚早に過ぎるのではないだろうか。
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川内村「帰村宣言」 村民「国・東電信じられない」
 福島第1原発事故で役場機能を移転した福島県内の9町村で初めて、川内村が「帰村宣言」を出した。緊急時避難準備区域の指定が昨年9月末に解除され、大半の村民が帰れる状況になったが、現在住んでいるのは村人口の7%。地域崩壊を警戒する村は早期帰還を呼び掛けるものの、賠償問題や放射線への不安、産業復興などを乗り越えなければならない。
 川内村では電気、ガス、水道、ごみ処理などのインフラは復旧済み。村中心部の空間放射線量は毎時0.1マイクロシーベルトで、福島市や郡山市の数分の1程度と低く、他市町村より帰還への環境は整っている。
 しかし、村民の帰還は進まない。村人口約3000人のうち現在、村内に住むのは約200人。昨年9月の時点では約220人で、緊急時避難準備区域の指定が解除され、帰還が促されたにもかかわらず、減少した。
 帰還に踏み切れない大きな原因として村民が指摘するのは、皮肉にも、避難者の生活を守るための原子力損害賠償の存在。 原発事故による避難者には、精神的損害に対する賠償として東京電力から1人当たり月10万円が支払われているが、避難先から村に戻れば受け取れなくなるからだ。
 「村民の約7割が郡山市に避難している。お金をもらって都会で暮らせるうちは、田舎の村には戻ってこない」と村民の一人は賠償制度の在り方を疑問視する。
 村内の線量は比較的低いが、放射線への恐怖感は全村避難を経験した村民に刻み込まれた。村中心部から第1原発への距離は20キロちょっと。村東部は今も警戒区域だ。
 事故対策が後手後手になった国や東電への不信感は強い。「国の事故収束宣言は誰も信じていない。(建屋が壊れ)むき出しの3号機や4号機が大きな余震で崩れたらまた避難だ」と別の村民は話す。
 村はコメの作付け制限を今年も継続する方針を示し、「コメを作れないのでは帰っても仕方がない」と農家には落胆が広がっている。 「景気がいいのは除染ビジネスだけ。村民が戻ってこないので商店は大変だ。村の産業構造がいびつになりかねない」と村商工会は危機感を強める。(河北新報)

川内村民、思いは複雑 「帰村宣言」に歓迎と慎重
 川内村の遠藤雄幸村長が「帰村宣言」した31日、地元川内村や避難先の郡山市などで過ごす村民は「やっとこの日が来た」と前向きに捉える人がいる半面、「帰還はまだ早いのでは」と慎重な意見もあり、それぞれの思いの中で宣言を受け止めた。
 村で住民の帰村を待つ人たちにとっては待ち望んだ「宣言」。村民を迎えるための事業を進めている「川内へ迎える会」のメンバー西山かね子さん(62)は4月から、娘夫婦と小、中学生、保育園児4人の孫が村に戻る。「ずっと村で待っている側にとってみれば、『やっとこの日が来た』という感じ」と笑顔を見せた。
 一方「帰りたいのはやまやま。気持ちとしては百パーセント帰りたい」と涙ぐむのは、郡山市の仮設住宅に避難する女性(74)。女性の娘(52)は「帰っても生活できないし、仕事も見通しが立たない。買い物もできないし病院もない」と課題を挙げ、「帰りたいけど帰れない」という複雑な胸の内を明かした。(福島民友)

原発避難、3人に1人戻らない 福島・葛尾村
 東京電力福島第1原発事故で警戒区域と計画的避難区域となった福島県葛尾村が、高校生以上の避難住民1390人を対象に先月実施したアンケートで「村へ戻らない」のは、回答者の3人に1人の割合だったことが1日、分かった。村の担当者は「このままでは自治体としてやっていけるか分からない。戻ってくれるよう復興対策の説明会などを開いていきたい」としている。 葛尾村は、東日本大震災が発生した3月11日時点の人口が1573人。原発事故で役場機能を当初、県西部の会津坂下町に移し、中部の三春町に再移転した。【共同通信】
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漏えい水は8.5トン=4号機建屋配管、地下に流入―福島第1
 東京電力福島第1原発4号機の原子炉建屋1階の配管から炉内のものとみられる水が漏れた問題で、東電は1日夜、漏えい量は推定8.5トンに上ると発表した。配管付近の床に漏れていた水量は約6リットルだった。
 東電によると、配管は原子炉ジェットポンプの流量を調べる機器のもので直径は約9ミリ。配管はもともと差し込まれていた部位からすっぽり外れていたという。凍結による損傷の可能性もあるが、原因は不明。漏えい水は4号機建屋の地下1階に流れ込み、建屋外への流出はないとしている。 (時事)

県税150億円減収見込み
 県は平成24年度の県税収入について、23年度当初の約1750億円に比べて150億円規模の減収を見込んでいることが分かった。1600億円規模となる見通し。5年前の19年度と比較すると900億円規模の減収だ。
 県は東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で被災者を中心に所得が減るなどして個人県民税や法人県民税が減少するとみている。事業を停止した法人があったことから法人が所得に応じて納める法人事業税なども減ると見込んでいる。  さらに定期点検で燃料棒を原子炉に挿入した際に発生する核燃料税については24年度は原発事故のため課税できない見通しだ。
 核燃料税による税収は23年度当初で44億7千万円を見込んでいた。県は原発事故を受けて納付が困難と判断し、昨年6月定例県議会で約36億円を減額した。 (福島民報)

東海第二再稼働 「現時点で容認できず」
 那珂市の海野徹市長は三十一日、隣接する東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の再稼働について「現時点では容認できない」との考えを明らかにした。また、再稼働の賛否を問う住民アンケートを行う意向も示した。市役所で報道陣の質問に答えた。 
 海野市長は「福島(第一原発)事故で安全神話が崩れた。(非常時に)コントロールできず不安がいっぱいだ。(震源が東北沖ではなく)直近だったら完全に津波が(東海第二原発の防護壁などを)越えていた」と強調した。那珂市は十キロ圏に市域の大部分が入っていることを挙げて「事故があれば深刻な事態に陥っていた。福島の炉心溶融の原因もはっきりしない現時点で再稼働は容認できない」と述べた。

 原電が津波対策などの安全策を講じ、国から再稼働要請があった場合には内容を精査し、賛否を問う住民アンケートを実施して「結果を最大限尊重する」とした。仮に住民から再稼働を問う住民投票の直接請求があったときには、そのための条例案に前向きな意見を添えて、議会に付議する考えを示した。
 那珂市は一九九九年の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO、東海村)臨界事故で、十キロ圏の住民を屋内退避させている。海野市長は東海第二原発の避難計画について「三十キロ圏に住む約百万人を大移動させる道路を造るとなれば天文学的な費用が掛かるだろう」と話した。
 東海第二原発をめぐっては、東海村の村上達也村長が国に「廃炉」を提言し、日立市の吉成明市長も「廃炉にする方向なのだと思う」と発言している。

 東海第二原発の今後を東海村と周辺の首長が協議する第一回懇談会が二月六日に同村で開かれる。同村と那珂、水戸、日立、ひたちなか、常陸太田の各市が出席する。(東京新聞茨城・井上靖史)

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福島、除染計画進まず 仮置き場確保難航 住民反対根強く(河北新報より)
● 除染計画を既に策定したか、今後策定を予定しているのは40市町村。放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、国の費用負担で住宅や農地、公共施設の除染を進める。 県によると、昨年末までに26市町村が計画を策定したが、実際に住宅などの除染作業に取り組んでいるのは福島市、伊達市、川内村だけ。ほかの市町村は仮置き場選定が進まないなどの理由で、作業に入れていない
 仮置き場での保管期間は、国が中間貯蔵施設を建設するまでの3年間とされる。
 河北新報社の取材によると、除染計画を策定した26市町村中、仮置き場が全て決まったのは広野町のみで、まだ1カ所も決まっていない自治体も多い。難航の原因は、周辺住民の反対意見が根強いためだ。
 相馬市では今月、ようやく1カ所目の仮置き場が決定したが、昨年秋に2カ所の候補地を決めて住民説明会を実施したときは反対意見が多く、いずれも断念している。昨年末、3カ所目の仮置き場の確保を目指した桑折町も住民の反対を受け、まだ決定に至っていない。 国は中間貯蔵施設を3年以内に設置する方針だが、いまだに具体化していないことも、住民の不信感を高める結果になっている。

双葉町長:政府と東電を厳しく批判 国会事故調査委で(毎日)
●放射性物質の拡散予測データが当初、住民に提供されていなかったことについて「手元にあれば当然違った方向に(避難の)かじを切った。罪の深さは計り知れないほど大きい」と、政府を厳しく批判。
●「避難指示は政府から出たが、その後の行動については一切、指示や指導がないまま今日に至っている。大変残念だ」。
●東電に対しても「事故を発生させ、(その後の賠償などについての対応も)紳士的とは言えない」と述べ、経営陣の総退陣を求めた。国会事故調には「苦しさや無念さが晴れるような調査をお願いしたい」と訴えた。
●委員会後の対話集会には、町民約100人が参加。「国や東電が原発の安全神話をつくった」「なぜそういう妄信が生まれたのか、徹底調査し後世に残してほしい」などの声が相次いだ。
●黒川委員長。「現場の感覚は、ずいぶん政府が言っていることと違う」。

六ケ所村:溶融炉に不具合 核燃料再処理工場(毎日)

米イリノイ州の原発、緊急停止 外部電源喪失
【ニューヨーク共同】米イリノイ州北部にあるバイロン原子力発電所で30日、2基ある原子炉のうち1基につながる外部電源が失われたため、炉が緊急停止した。AP通信が報じた。米原子力規制委員会(NRC)などが原因を調べている。
 外部電源の喪失後、ディーゼル予備電源が作動。炉の圧力を下げるため、低レベル放射性物質を含む蒸気を大気中に放出したが、NRC当局者らによると、原発作業員や周辺住民の健康に影響しないレベルという。残る1基は稼働している。 バイロン原発は、シカゴの西約150キロに位置する。
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沖縄防衛局長、週内にも更迭=市長選告示までに判断-政府
 沖縄県宜野湾市長選(12日投開票)に絡み、防衛省の真部朗沖縄防衛局長が市内在住の職員らに投票を求める講話をした問題について、田中直紀防衛相は1日、真部氏を更迭する方向で調整に入った。市長選が5日に告示されることから、週内に判断する方針だ。
 防衛相は1日夜、政務三役と対応を協議。真部氏ら関係者の処分について、調査を徹底的に行った上で判断する必要があるとして、2日以降に先送りした。また、防衛相をトップとする「業務適正化委員会」を設置し、公務員の政治的中立性が疑われる問題の再発防止に努めることで一致した。防衛相は協議後、真部氏の進退に関し「選挙にご迷惑がかからないような形を考えていく」と記者団に語った。
 政府・与党内では、真部氏の更迭は避けられないとの見方が強まり、渡辺周防衛副大臣は1日、記者団に「大きな問題になっていることは、われわれも共有しているし、局長も分かっている」と強調した。政府筋は同日夜、「首相官邸は予算を通すことが最優先だ。局長をかばうつもりはない」と言明した。

 ただ、講話の内容は、公務員の選挙運動を禁じた公職選挙法違反に抵触しない(???)として、訓戒や厳重注意などの処分にとどまるとの指摘もある。  一方、真部氏は1日午後、同県嘉手納町の沖縄防衛局で、社民党の山内徳信参院議員ら同県選出議員と会い、講話について「政治的行為に当たるという認識は持っていなかった」と説明。自らの責任に関して「本省(の判断)に従う」と述べた。真部氏はまた「常にということではないが、そういうことをしてきたことはあろうかと思う」と述べ、以前にも選挙に絡んで同様の講話を行ったことを認めた。

真部局長招致へ=衆院予算委
 衆院予算委員会は1日午後の理事会で、防衛省の真部朗沖縄防衛局長を参考人招致することで合意した。民主党は真部氏を招致の上、2日にも「講話」問題で集中審議を実施する意向を示したが、野党側が2011年度4次補正予算案の締めくくり質疑に優先して集中審議を行うよう主張したため、結論が出なかった。同日再協議する。  理事会ではまた、同日午前に一般質疑、午後に先の内閣改造で入閣した5閣僚に対する質疑を行うことでも合意した。(時事)

2012年1月28日土曜日

3・11原発ゼロへ!国会囲もうヒューマンチェーン

3・11原発ゼロへ!国会囲もうヒューマンチェーン

※「人間の鎖」(1回目)は午後5時(予定)
実行委員会の名称: 3・11再稼働反対!全国アクション
・コース(予定:詳細は今後検討)
社会文化会館(三宅坂)に集まったうえで、二手に分かれて進み国会議事堂を両側から囲い込む→17時に「人間の鎖」(1回目)→首相官邸前に移動して抗議アクション(アポイントを取って要請書を手渡すことも)。
※参考 社会文化会館地図 http://www.tokyohomeless.com/body2-20.html

<趣旨など>
・午後のアクションと夕方早めの各地からの合流アクションという二段構えで取り組む。
・フランスの脱原発ネットワーク発の「世界各地でヒューマンチェーンを」の呼びかけに呼応して、今まで試みていないシンボリックなアクション(参加者が集まりやすいもの)として、国会を「人間の鎖」で囲み、後半に首相官邸付近に集まり、声を届ける。
・メーリングリストやホームページ http://nonukes.jp/ などで告知を開始し、ブログやツイッター、フェイスブックなどでの広報を呼びかける。

2012年1月27日金曜日

「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」

サパティスタ連帯企画 DVD上映と現地訪問報告
「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」


■ DVD「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」(2007-11年 65分)上映
■ サパティスタ自治地域訪問の最新報告
□ 2012年3月3日(土曜)
□ 京都・かぜのね 多目的スペース
京都市左京区田中下柳町7-2
京阪「出町柳駅」出口⑥より徒歩1分 TEL 075-721-4522
http://www.kazenone.org
□ 開場 14:10 開始 14:30 (16:30終了予定) 
□ 参加費 500円
□ 主催 メキシコ先住民運動連帯関西グループ
DQM06014@nifty.com

 メキシコ・チアパスにおいて先住民族の生活と尊厳に根ざした運動を展開するサパティスタ。その主張と実践は今日世界各地で展開されている諸運動に豊かな示唆を与えてもきました。今回私たちは「尊厳の叛乱ーチアパスにおけるサパティスタ運動」(65分)の上映を軸に連帯企画を開催します。
 このDVDはドイツの連帯グループが作成したもので、サパティスタ運動の紹介、自治体制(保健衛生、教育、農業、集団作業)の考察、運動の内外における障害の考察 という3部で構成されており、サパティスタが日々作り出そうとしている自治の一端を垣間見ることのできる内容かと思います。 スペイン語。英語字幕。日本語での簡略な説明を適時加える予定です。また当日はこの1月に現地を訪問したメンバーの最新報告も併せて行います。なお終了後にはかぜのねカフェスペースにて交流会を予定。お気軽にご参加ください。

チラシ PDFデータ (活用配布歓迎)
A5チラシ
http://homepage2.nifty.com/Zapatista-Kansai/2012030301.pdf
A4(A5チラシ×2枚組)
http://homepage2.nifty.com/Zapatista-Kansai/2012030302.pdf

木下尊惇さんから

日本中を真冬の空気が覆っています。それでも庭の梅のつぼみは、日に日にふっくらとしてきています。
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
 直近のご案内となってしまいましたが、1月29日(日)に、福島駅周辺で『ふくしまの春』というイベントが開催されます。 福島県内の伝統芸能・伝統工芸などが一堂に会するイベントです。川俣町からのコスキンパレードに、私も上松美香さんと参加します。また、福島駅ビルS-PALのクエストホールでも、川俣町の子どもたちと共に演奏します。

 福島市内・県内から飲食の名店が屋台を出店、ドン・ミゲルのエンパナーダでは、本場ボリビアのサルテーニャもあります。 首都圏から日帰りも可能なイベントです。どうぞお出かけ下さい。
 詳しくは下記アドレスからご覧下さい。 http://www.kizuna-fukushima.jp/
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 昨年6月から交流の続いている、福島県川俣町山木屋小学校の子どもたちとのCD制作&コンサートを企画した『山木屋のわプロジェクト』が動き出しました。HPも作りましたので、どうぞご覧下さい。 http://www7b.biglobe.ne.jp/~takataka-office/saludos/yamakiya/yamakiyanowa.htm
 みなさまのご支援・ご協力を、心よりお願い申し上げます。

 福島関連の活動報告のために、ブログ『までいなキャラバン』も立ち上げました。http://madeina.blog.fc2.com/
なかなか更新が追いつきませんが、ご覧いただけたら幸いです。 HPも、スケジュールなど随時更新してゆきますので、本年もどうかよろしくお願いいたします。

木下尊惇
taka taka office
takataka-office@mvh.biglobe.ne.jp

2012年1月19日木曜日

3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える

3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える

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 脱原発世界会議が終わり、3・11福島大集会まで50日と迫った。この集会は、東日本大震災で亡くなった人々の慰霊とともに(だから、「デモ」や「パレード」という表現はなじまないかもしれない)、「脱原発宣言」を発した福島がほんとうに「原発のない社会」を実現できるかどうかを占う、とても重要な日になると私は思う。
 福島がこれまで通りの「原発と共存する社会」になってしまえば、今後何十年たっても日本で脱原発なんか実現できるはずがない。 昨日の、傍聴人を締め出し強行された大飯原発の「ストレステスト妥当評価」をはじめ、連日のように原発をめぐる洪水のような報道にさらされ、ただ情報を追うだけで疲れてしまう毎日が続いているが、この一年をふり返り、〈問題〉を整理するためにも、私にとっての「3・11福島大集会のアジェンダ」を考えてみたい。


 「原発のない福島」なくして「原発のない日本」はありえない
 私の机の上には、『週刊朝日』の最新号(1/27日号)がある。この号に、「今も「原子力ムラ」で大きな影響力を持つ人物」と「東電幹部」との間で交された、福島第二原発の再稼働に関するメールのやりとりをスクープした記事が掲載されている。
 「原子力ムラの大物」曰く。「事故以来、「原子力ムラは劣勢である。だが事故はいつかは風化し、記憶から消えてゆく。火をつないでことが大切である」・・・。
 詳しくここでくり返すことはしないが、国、東電、原子力ムラは、福島第一5、6号機と第二原発を廃炉にしないことを大前提にこの間動いてきた。半年前のNEWSポストセブンの「福島第一原発5、6号機いつでも再稼働可能と東電協力会社幹部」(2011年8月25日)。
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 東電は、「工程表」に基づき、原子炉循環系の確保、海洋汚染防止のための遮蔽壁の設置、余震、津波対策などを同時並行で進め、そこには5、6号機向けの防波堤補修など再稼働へ向けた準備も含まれる。
 「再稼働」について、東電広報部はこう説明する。 「発表はしていませんが、防波堤補修のために、消波ブロックの積み上げ工事を、9月末までをめどに行なっているのは事実です。1万個? いや、約3000個と聞いています。再稼働については、国や地域のご理解をいただきながら進めるもので、今、申し上げる段階ではありません。また、5、6号機も福島第二も大切な経営資源という認識です」
 人も組織も簡単には変われない。原発は今も東電にとって推進すべきものだし、ある程度は情報や資料を公開しているものの、「知らしむべからず」の基本姿勢に変わりはない。その「ブレない東電」に政治がブレずに対応できるのか。電力行政に関する「ポスト菅」の役割は大きい。
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 郡山で開催される3・11福島大集会の第一の〈アジェンダ〉は、既定の方針として確定している福島第一1~4号機の廃炉だけでなく、第一・第二全号機の廃炉と、福島からの「原子力事業所」の廃絶および「原子力産業」の退去を明確に打ち出すことにある。
 まずは集会実行委がこの点を明確にすることだ。そして、県知事はじめ福島県内の関係者が「脱原発宣言」を「宣言倒れ」にしてしまわぬよう、政治的に形あるものとする具体的な行動が問われている。3・11までの50日間、どこまでこれらができるか。福島のみならず、日本の脱原発派にとって3・11は大きな試金石となるだろう。


 福島の復興・再生は、たんなる「自治体・産業の復興・再生」にあらず
 二つ目の〈アジェンダ〉がこれである。非常にデリケートな問題であるが、今、県や市町村の自治体レベルで進めている「帰還運動」と「再生可能エネルギーの一大拠点化(企業・研究機関誘致)」との関係で考えるとわかりやすい。
 一市民(県内外の家を追われた人々、農民(専業であれ兼業であれ)、漁師、こども・・・)の目から言えば、重要なのは「3・11以前」の生活/労働環境の原状回復、そしてそれが叶えられるまでの期間における生活と労働の補償と保障なのであって、必ずしもそれは「自治体・産業の復興・再生」とは一致しない。
 この意味において、県や一部市町村レベルの「帰還運動」は、自治体機能の崩壊を怖れるあまりの「行政的思考の産物」と言うことができる。少なくとも、「原子力緊急事態」の完全収束が客観的に確認できる以前の住民に対する帰還アピールは時期尚早、と思うのだがどうだろう。

 また、「再生可能エネルギーの一大拠点化」、そのための企業・研究機関誘致についても、どのような再生可能エネルギー、企業、研究機関なのか、が問われねばならないだろう。少なくとも、現在構想され、進められているものは国と自治体の官僚機構主導のものであって、「草の根」のイニシアティブの根をはぐくむようなそれでないことは確認しておく必要があるのではないか。 県と自治体のホームページを見れば明らかなように、「復興計画」はそれぞれ何回かのヒアリングを経ながらも、「市民の声」を反映しているとは言えないのである。


 汚染・除染・帰還--立場の違いと意見の〈多様性〉を認め合うこと

 「たんぽぽ舎」に、「福島へ行こうバスツアー」に対し、「S区Y氏」からこんなメールが届いたそうだ。
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 いつもご苦労様です。メール情報で勉強させていただいております。 が、本日下記の情報には目を疑いました。
☆ さようなら原発1000万人アクション in 福島 現地集会
  3月10日(土)・11日(日)福島へ行こうバスツアー 申込み開始

 私は皆様と同じく反原発の立場に立つ者で、原発をなくすために 微力を尽くしたいと考えるものの一人です。
 しかし上記ツアーについては、会津など比較的線量が低いところで行われるというなら別ですが、もし、そうでないのなら懸念します。
 あれから一年という節目のイベントが大事なものであることは一般論としては理解できるとしても、それをあえて福島という高線量地域で行うこと、他地域からわざわざツアーを組んで向かう意味は私には理解できません。決死隊ですか? もちろん違いますよね。参加しようとする方は実際は真剣な方ばかりだと思いますが、 私には、何か間違っているように思えます。浜岡原発ツアーとか、柏崎刈羽ツアーとか、それならばわかりますし 私も参加してみたいと思ったりします。
 しかし、福島なら行けません。そんなに気軽に行ってよいところではないと思うのですけれど、 参加者はそれなりのリスクを理解して行くのでしょうか…。脱原発派の中には、現実の放射能被爆に対しては意外と 無頓着な人がいるという話も聞いたことがありますので心配です。短期滞在とはいえ、反原発のこれからを担って行くであろう人材たちに 被爆を積み重ねてほしくないなあ、と思ってしまいます。まさか子連れで参加しようなんていう方がいたら、私は絶叫するかもしれません。私には全くもって驚くべきツアーですが、さらには、主催ではなくとも、たんぽぽ舎が 関わっているということに正直、驚いています。無論、たんぽぽ舎の存在意義は大きいという私の認識には変わりはありませんが…。
 以上、読者の一感想としてお伝えしたく思います。上記の懸念が杞憂であり、イベントが安全な地域で行われるものであることを願ってやみません。

○たんぽぽ舎からの返事
1.メールありがとうございました。集会会場は、郡山市です。郡山市の放射線量モニタリングの数値は、市合同庁舎で、0.69から0.70マイクロシーベルト(1月14から16日)くらいです。
2.この行動は、さよなら原発1000万人アクションが中心です。(福島県内で1万人、県外から1万人、計2万人の予定) 福島からはぜひ「福島を忘れていない」意味からも来てほしい、と熱烈なよびかけです。私たちと親しい市民グループからもきています。これらの人たちとの連帯が原発廃止運動に重要だと考えています。
3.私たちは、放射能はイヤですが、「連帯」を重視します。もちろん、「マスクも帽子、手袋なども用意」して、対策には努めます。ご心配いただいてありがとうございます。
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1/26
 放射能汚染に対する「一般的恐怖」「現実的恐怖」「犯罪的無知」という表現を使ってきた。
 「汚染や被ばくは限りなくゼロであるのが望ましい」という以上に、被ばく量に関する「科学的基準」などない。文献にあたり、専門家の見解を参考にしながら、私たちは私たちの「知見」を深めるしかない。

 放射能汚染や被ばくを好む人はいない。その意味で言えば、表現上どこか真意を測りかねるところはあるが、「S区Y氏」の懸念は正論である。正論ではあるが、福島の集会に参加しようとしている者の一人として言えば、これまでも耳にしてきたこのような主張が忘れているものがある。それは、県外に避難した人々よりも県内にとどまっている人々の方が福島県人の圧倒的多数を占める、という現実である。

 福島の中で、とりわけ浜通りや中通りと呼ばれている県中央以東の地域で、復興支援や被災・被曝者支援活動を行うことは、ある種の「覚悟」を要求する。当然のことだ。そこで住んでいる人々が「覚悟」を決めて生活しているからである。住んでいる者も、支援する者も、内部と外部両方の積算被ばく量を慮りながら、生活し支援しているのである。
 しかし実際には、自分がどれだけ被ばくしているかなんて、ほとんどの人は正確に把握できていないだろうし、日常の生活や活動の中では「そんなこと」に構っていられなく局面も多い。そういう現実を人々に強いているという一点において、原発災害と「3・11」以後の国・東電・自治体・原子力ムラの対策や対応は犯罪的なのだと私は思う。

 もう一点。「覚悟」は要求されるが誰もその「覚悟」を強いられる謂れはない。呼びかけに呼応し集会に参加するもしないも、何か行動するもしないも、すべてはそれぞれの判断次第である。誰も強いないし、誰からも強いられることもない。 日常生活の中で私たちは「外部世界」からの様々な「呼びかけ」を受け、何をする/しないの自己決定を下しているが、それと同じことである。
 呼びかけに応えて私は私の覚悟で福島に行く。あなたはあなたの覚悟で行く/行かない。あえて「それだけのこと」、と言うことにしたい。
 それぞれの「覚悟」に、それぞれが敬意を示しあう、そうありたいものだと思う。

 「帰還宣言」?
 ところで。 「3・11」以後、警戒区域と緊急時避難準備区域(昨年9月解除)に指定された福島県川内村が今月の31日、「帰還宣言」を発するという。報道によれば、除染によって3月末までの全員帰村を目指し、4月からは役場や学校も再開する予定とのことだ。しかし、汚染は広がり、除染は進まず、帰還の前途は厳しいものがある。

 3・11福島大集会の〈アジェンダ〉の一つに、自治体の復興をかけた「帰還運動」をどう考えるか、がある。
 私が知るかぎりでも、福島の人々が置かれている状況は、とても複雑だ。今でも避難したくともできない人々、帰りたくとも帰れない人々がいる。どんなことがあっても生まれた場所で生きてゆこうときめた人々もいる。
 職場に仕事、学校、資金、家族構成等々、さまざまな条件や要因が絡み合い、それぞれの人々がそれぞれの選択をしている。 その複雑さを、まず理解することから始めたいと思う。

 私には、国や自治体の「行政方針」としての避難区域の見直し→帰還運動が、その着眼と発想において、「それぞれの人々のそれぞれの選択」を保障し保証するものとはどうしても思えない。その意味において、私は「帰還運動」や「帰還宣言」に反対の立場にたっている。
 3・11大集会では、そうしたそれぞれの人々のそれぞれの選択が保障され保証されるよう、国・東電・自治体に訴えかけてゆくことが問われている。

 「除染ボランティア」
 「帰還運動」は地元住民の「除染作業」への「雇用」や「除染ボランティア」への動員と一体化している。
 私は、これらいずれに対しても反対である。国・東電・自治体が除染に関して「やるべきこと」をやらないまま、地元住民を「雇用対策」の一環として、あるいは「ボランティア」として動員しようとしてきた/いるとしか思えないからだ。
 
(つづく)

・・・
1/26
汚染焼却灰「記念品だ」 福島・塙町長が東電に手渡す
 福島県塙町の菊池基文町長は25日、東京電力本店(東京)を訪ね、白河、会津地方の自主避難者も福島第1原発事故の損害賠償の対象に入れるよう求めた。高い放射線量が出て処理できない汚泥の焼却灰を持参し、「福島を分断することは許されない」と訴えた。
 菊池町長は灰をドクロマークの紙を張った容器に入れ、交渉に臨んだ。「この灰は捨てる場所がなく、成仏できない。花咲かじいさんは木に灰をまいて花を咲かせたが、この灰は人を滅ぼす。白河、会津地方は蚊帳の外に置かれたが、われわれはこんな恐ろしい灰とともに生活している」と述べた。
 東電の西沢俊夫社長は「誠心誠意対応する」と答えた。菊池町長は交渉後、皮肉交じりに「記念品だ」と言い、灰の容器を東電の役員に渡した。  灰は塙町など西白河郡の4町村でつくる衛生組合のし尿処理場の廃棄物。1キロ当たり8000ベクレルの線量が検出され、約3トンが行き場を失って処理場の車庫に保管されている。
 菊池町長は白河、会津地方の26市町村長で構成する原子力損害賠償対策本部の一員として参加した。本部は国の原子力損害賠償紛争審査会の指針が白河、会津地方の自主避難者を損害賠償の対象から外したことに異を唱え、指針が賠償の対象とした浜通り地方などの23市町村の住民と同様に賠償するよう要求した。
(河北新報)

1/20
除染事業、環境省が格安で発注 地元業者「できるのか」
 東京電力福島第一原発事故の警戒区域内で環境省が進める除染の受注業者を決める初の競争入札で、大手ゼネコン2社が1億円超の金額を示すなか、同省が予定価格を大きく下回る1650万円で契約を決めた。地元の建設業者からは「こんな低価格できちんとした除染ができるのか」との声が出ている。
 初の発注となったのは、福島県楢葉町役場の周囲約4ヘクタールで、放射能汚染を清掃や高圧水で取り除く作業。5日に環境省で競争入札があり、前田建設工業1650万円、清水建設1890万円、大林組1億2300万円、大成建設2億7700万円――という応札額(消費税抜き)になった。  同省会計課によると、1650万円は、同省が事前に定めた予定価格(非公表)を大きく下回っていた。このため、この日の契約は見送り、翌日に前田建設工業から事情を聴いた結果、特に問題はないことを確認して契約したという。 (朝日)

震災がれき受け入れ問題 静岡県(島田市)内混迷 (静岡新聞)
福島の汚染石材問題 対応後手に回り、流通防げず(河北新報)

原発推進:11大学に104億円 国と企業が提供
 東京大や京都大など11国立大学の原子力関連研究に対し、06~10年度、国や原子力関連企業などから少なくとも104億8764万円の資金が提供されたことが、毎日新聞の集計で分かった。規模の大きな大学は毎年、数億円規模で受け取っている。「原子力推進」に沿う限り、研究資金を安定的に得られる仕組みで、大学が国策に組み込まれている構図が鮮明になった。
 各大学への情報公開請求で得た資料を分析した。原子力関連の研究室や研究者が、受託研究▽共同研究▽奨学寄付金▽寄付講座--の形で、国、日本原子力研究開発機構などの政府系団体、電力会社や原子力関連企業から受け取った金額を集計した。未公開部分もあるため、実際にはもっと多いとみられる。
 ほとんどは受託研究が占め93億円。特に国からの委託は高額で、文部科学省が福井大に委託した「『もんじゅ』における高速増殖炉の実用化のための中核的研究開発」(5億1463万円、10年度)など億単位も目立つ。  共同研究は総額4億1083万円。企業側が数十万~数百万円を負担することが多い。 奨学寄付金は総額2億1822万円で、研究者が自由に使えるケースも多い。
 個人別で最多だったのは、福島第1原発事故直後、当時の菅直人首相から内閣官房参与に任命された有冨正憲・東京工業大教授で1885万円。有冨氏は「持病があり、学会などで海外渡航する際にエコノミークラスが使えず、旅費がかさむ。その点を配慮してくれているからでは」と話す。  企業からの寄付が研究結果をゆがめる恐れについては、「気をつけている。私は安全評価より開発研究が中心で、問題は生じないと思う」と話した。
 一方、原発の危険性に警鐘を鳴らし続けてきた京都大の小出裕章、今中哲二の両助教には、「原子力マネー」の提供はなかった。 寄付講座は4大学が電力会社などの寄付で開設し、総額4億9100万円だった。 大学別では、京都大33億640万円、東京大25億5895万円、東京工業大16億7481万円の順だった。【毎日、日下部聡】

「原発事故は今も進行」 政府事故調説明会で訴え 
 政府の東京電力福島第一原発事故調査・検証委員会は20日、福島市で県内の自治体を対象にした中間報告説明会を開いた。出席した市町村からは「浪江町の砕石場の土砂問題が判明するなど原発事故は今も進行中だ。どこまで調査するのか」など今後の調査・検証への意見や要望が相次いだ。
 昨年12月26日に公表した中間報告書の説明会で、県内の49市町村と県の担当者が参加。畑村洋太郎委員長ら6人が臨んだ。畑村委員長は「この事故の教訓を後世に生かすことが大切。疑問点や要望を伝えてほしい」と述べた。
 説明後の意見交換では、福島市の担当者が「事故はまだ収束していない。今後の調査方針を示してほしい」と質問した。これに対し、作家の柳田邦男委員は「今回の原発事故は、事故そのものの調査のほか、被害調査こそが重要だ。被害がどう拡大し、なぜ防げなかったのか、最大限検証したい」と答えた。
 県は中間報告で記された「これまでの原子力災害対策で全体像を俯瞰(ふかん)する視点が希薄だった」との点について説明を求めた。委員会側は「行政も原子力安全委員会も東電も、それぞれ自分の担当の仕事は一生懸命やった(?)が、全体がどうなっているのかという視点が十分ではなかった」と問題点を指摘した。  委員会は今後、当時の閣僚の聞き取りなどを経て、夏に最終報告をまとめる。(福島民報)

「反面教師にして欲しい」双葉町の井戸川町長インタビュー(ourplanet)

「意見聴取会」に対する抗議行動の報告
 みなさまへ
 本日のストレステスト意見聴取会についてのご報告です。
 保安院は本日、関西電力大飯原発3・4号機のストレステスト結果を「妥当」とした結論をまとめ、意見聴取会に提出しました。しかしその意見聴取会は、市民を締め出し、直接の傍聴もモニタを通じた傍聴もない、密室審議でした。保安院は市民を完全に閉め出した状況でストレステストを妥当とする評価を出すという暴挙に出たのです。井野さんと後藤さんの2名の委員は、傍聴のない審議には応じられないとし、その会議には参加していません。意見聴取は十分行われたとはいえず、今日の会議は無効にすべきです。

<ドキュメント>
 会議場には、杉原さんら市民20名余りが入りました。私は4時すぎに、少し遅れて郡山の方と10階のモニター別室ではなく、11階のリアル会議が行われている部屋に向かいました。テレビは「市民団体乱入」などと伝えていましたが、すんなりと部屋の中に入れました。乱入でも何でもありません
 20名くらいの市民が、傍聴者を締め出しての審議を批判し、傍聴者を入れての審議と利益供与を受けている委員の辞任を求めました。いっしょに入った郡山の方は、福島の深刻な状況を伝えていました。こんな状況でなぜ再稼動について議論できるのかと。さらに委員に「福島の事故は本当に収束したのですか?」と問いかけていました。答えた委員は誰もいませんでした。みなうつむいて市民側の訴えに反応しまいとしていました。

 会議は開始1時間以上たっても始められず、警官が廊下に並び、私服がうろつくという異様な状況でした。とても議論ができる状況ではなく、普通なら流会、後日仕切りなおしでしょう。しかし保安院は、流会の宣言をせず、今日の対応について協議すると言って、委員を外に連れ出しました。井野さんと後藤さんは応じられないと残りました。5時半から枝野大臣が、部屋に入った市民を批判する会見を開きました。
 その後、保安院は、関電とJNESの説明者も連れ出しました。何が何でも今日中に決めるということでしょう。こちらは、流会にせよ、もし今日やりたければ講堂を確保して傍聴希望者全員を入れることと、利益供与を受けた委員を出席させないことを条件に出しました。しかし7時20分になって、保安院は、会合を別の会場で再開する、会場にはマスコミを入れるが傍聴者は入れないと宣言、部屋には、井野さんと後藤さん、それにマスコミと市民が残っていましたが、一体どういうつもりかと保安院を取り囲んで聞いていました。
 その後、保安院の別の担当者が、井野さんと後藤さんに、別室での会合に参加して欲しい、さもなくば欠席扱いにするぞと。お二人は、市民の傍聴が前提、傍聴ができない密室審議は審議そのものが認められないと抵抗しました。保安院が 出て行くと、その場は自然と市民側の記者会見場になりました。その後、会場を後にし、別館の前で続いていた屋外の市民集会に合流しました。

<これから>
 すぐそばで傍聴を希望する市民の意思よりも、IAEAが来る前に手土産を優先するという許されない暴挙だと思います。しかし、みなさんの力により、傍聴完全排除という形式でしか審議をさせなかったことは成果だと思います。IAEAの調査、4大臣の承認、そして地元の了解と、まだハードルがあります。
 さらにハードルを儲けようと、国会の事故調が徹底した原因究明を行うまで再稼動の判断をしないよう求める文面の議員署名を集めます(19日14時参議院議員会館ロビー集合)。さらに26日には、再処理問題と原発運転再開問題に焦点を当てた政府交渉を準備しています。26日13時参議院議員会館ロビー集合です。こちらにも是非足を運んでください。集会デモも予定されています。がんばりましょう。

 阪上 武(福島老朽原発を考える会)

<報道より>
関西電力大飯原発ストレステスト専門家会議 3時間遅れで開催、「妥当」との審査結果(FNN、1月19日、動画)
「密室」判断に憤り=反原発派「逃げるな」―傍聴求め怒号も・意見聴取会(時事通信、1月18日)
ストレステスト会議 開催できず(NHK、1月18日 18時8分、動画)
大飯原発:3、4号機の安全評価「妥当」保安院が初判断(毎日、1月19日)

・・・
南西諸島全域の有効活用
2010年12月に策定した防衛大綱に基づき日本の南西地域の島しょ部防衛を想定し、陸上自衛隊、米軍、第1海兵機動展開部隊との共同訓練をロサンゼルス沖合にある米海軍が管理する離島サンクレメンテ島などで初めて実施します。期間は1月16日から約1カ月間で、日本からは約180人(延べ人数5580人)が参加しアメリカ海兵隊員と行うそうです。多額の税金を使ってなぜアメリカにまで行って訓練をやる必要があるのでしょうか?(NO BASE 馬毛島- 1.16)

2012年1月15日日曜日

脱原発世界会議(1/14-15)

脱原発世界会議(1/14-15)










・・・
<緊急声明>

経済産業大臣 枝野幸男 様
原子力安全・保安院長 深野弘行 様

「ストレステスト意見聴取会」について
傍聴者締め出しの撤回と「利益相反」委員の解任を求めます


 東電福島原発事故により、地球上の大地も川も海も空も食物も放射性物質で汚染され、世界中の人々が影響を受けています。今、世界中が福島事故の収束と日本の今後の脱原発政策の早急な実施に注目しています。
 私たちは、福島のような事故を二度と繰り返さないために、1月14日から15日まで横浜で開催された「脱原発世界会議」に出席するために集まりました。日本側登壇者の責任において、以下を緊急に要請します。
枝野経産大臣は、就任時に情報公開を強く指示されたと聞いています。即時に善処してください。

1 傍聴者を会議会場から締めださないで
 次回1月18日のストレステスト意見聴取会には、会議室での傍聴が許可されないと発表されました。定期点検中の原発の再稼働問題が緊急の重要課題である現在、それに緊密に関わるストレステスト意見聴取会は、密室で議論されるべきではなく、会議室での傍聴を許可することが民主主義の原則に従うものです。
 是非とも同室で傍聴できるように善処願います。

2 利益相反行為を許さず、原発業界から寄付を受けている委員を解任して
 司会役の岡本孝司委員を含め、原発業界から寄付を受けている委員たちが3人もこの会の進行を主導していることは、許されません。原発大事故のあとの原発の再稼動にかかわる重要事項の決定に、利益相反行為の可能性のある者たちを起用することは、言語同断です。
 即刻、岡本孝司、山口彰、阿部豊の3委員を解任して下さい。

以上、強く要請します。
2012年1月15日 
脱原発世界会議 登壇者有志

雨宮処凛 作家・活動家
飯田哲也 環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長
岩上安身 ジャーナリスト・IWJ 代表
金子勝  慶應義塾大学経済学部教授
鎌田慧 ジャーナリスト
河合弘之 弁護士・脱原発弁護団全国連絡会代表・浜岡原発差止訴訟弁護団長
川崎哲 ピースボート共同代表
阪上武 福島老朽原発を考える会代表
鈴木かずえ 国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
アイリーン・美緒子・スミス 環境ジャーナリスト、グリーン・アクション代表
豊田直巳 フォトジャーナリスト
伴英幸 原子力資料情報室共同代表
マエキタミヤコ 広告メディアクリエイティブ(サステナ)代表
松田美由紀 女優・写真家
満田夏花 国際環境NGO FoE Japan 理事
山本太郎 タレント・俳優
(アイウエオ順)

連絡先:「脱原発世界会議」実行委員会
(この件問い合わせ:グリーン・アクション 090-3620-9251 スミス)
…………

★傍聴締め出しの撤回と岡本孝司、山口彰、阿部豊の3委員の辞任、そして、大飯3、4号機の評価案提出を強行しないよう、緊急に要請して下さい。短いもので構いません。新聞等への投書も有効です。

【経産省】広報 (FAX)03-3501-6942
【原子力安全・保安院】
代表 (TEL)03-3501-1511/広報課 (TEL)03-3501-5890
原子力安全技術基盤課(ストレステストを担当)(FAX)03-3580-5971 (TEL)03-3501-0621
メールによるお問い合わせ:ご質問・ご意見(保安院HP)
https://wwws.meti.go.jp/nisa/index.html
【枝野幸男経産相】
[国会事務所](FAX)03-3591-2249 (TEL)03-3508-7448
[地元・大宮事務所](FAX)048-648-9125  (TEL)048-648-9124
・・・

〈3.11福島県民集会(仮称)〉
■会場:開成山球場(郡山市) JR「郡山駅」からバスで「郡山市役所」下車
■日時:3月11日(日)13:00~
■ 内容:12:30 開場
   13:00 コンサート(~13:50)
   14:00 開会あいさつ
   14:05 主催者あいさつ
   14:13 来賓あいさつ
         ・佐藤雄平福島県知事
         ・大江健三郎さん(1000万人アクション呼びかけ人)
         メッセージ、来賓紹介
   14:33 県民代表の訴え
         ・避難者代表
         ・生産者代表
   14:45 黙とう
   14:46 集会決議文採択
   14:49 閉会あいさつ
         シュプレヒコール
   15:00 パレード出発
■ 主催:福島県民集会実行委員会
東京からのバスツアーの申し込みはこちら (募集締め切り2月10日)

2012年1月8日日曜日

汚染土壌「中間」貯蔵施設問題と「除染ボランティア」をどう考えるか

汚染土壌「中間」貯蔵施設問題と「除染ボランティア」をどう考えるか


 今週末(1/14-15)、「脱原発世界会議 2012 YOKOHAMA」が開催される。私もいくつかの「もちこみ企画」に参加すべく予定の調整を行っている最中だが、この世界会議の中でも議論が先送りにされているテーマがある。 その一つが、福島をはじめとした放射能汚染地域の「除染」と汚染土壌・ガレキの廃棄および貯蔵施設をどうするのか、という問題である。
 結論から先に述べよう。
 福島の汚染土壌などの「中間」貯蔵施設は、福島第一・第二原発全号機の廃炉と「事業所」そのものの廃止を政府・東電が正式に決定した上で、その敷地に建設すべきである。もちろん中間施設として。最終処分の方法や場所は、まずこの決定をした上でその後考えるしかない。これ以外に妥当と考えられる選択肢はない。読者はどのように考えるだろう。
 貯蔵施設を双葉町に建設するという政府「方針」は、この選択肢を取らないという民主党政権の方針を示したものである。つまり第一原発5、6号機と第二原発を存続させようとする東電と、その東電に「原子力事業」を継続させようとしている国の方針を象徴的に体現したものである。野田政権は東電を「一時」「国有化」し、「発送電分離」をしたとしても「発電」においては東電に「原子力事業」を残そうとしているのである。

 「脱原発宣言」を発し、福島第一・第二の全号機廃炉を打ち出した福島県、南相馬市をはじめ、双葉町を含む「浜通り」の全自治体・議会は、早急に国と東電に対し、
①福島第一・第二の全号機廃炉の正式な確約を取り付け、
②福島県における原子力事業所そのものの廃絶
③その土地利用として汚染土壌・ガレキの中間貯蔵施設建設を方針化するよう要請すべきである。
 これらを曖昧にし、先送りした福島県や南相馬市その他の自治体の「復興計画」などありえない
 知事、全自治体の首長、職員は「腹をくくる」べきである。

 具体的に言えば、こういうことだ。
 経産省がまとめた2012年度の「資源・エネルギー関連予算案等のポイント」を見れば明らかなように、国は福島第一原発5、6号機と第二原発の廃炉さえ検討していない。来年度予算に組み込まれているのは、第一原発1~4号機の「廃止措置に向けた研究開発」のみである。
・・
1.原子力災害からの復興・原子力安全の強化等 【146億円 ← 51億円】+[3次補正1,134億円] 
(1)廃止措置等に向けた取組 【39(新規)】+[3次補正1,134]
① 東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置に向けた研究開発
② 福島県等における再生可能エネルギーの導入支援・研究開発拠点の整備
③ 被災地域の産品等に対する風評被害の解消
④ 放射線の影響等に関する情報の提供
2)既存の原子力発電所の安全性向上のための取組等【58←2】
① 原子力発電所の安全性向上のための研究開発 等
(3)放射性廃棄物の処分等に向けた取組 【50←50】
地層処分のための技術調査 等
・・
 福島県および関係自治体は、脱原発宣言を有名無実化しないためにも、公文書での確認や法制化を伴ったものとして、福島における「原子力事業」の廃絶を国と東電、また東北電力に対して要請した上で、その具体化に向け、毅然とした姿勢を貫き、たたかうべきなのだ。その意味でこの間の福島県および県議会、南相馬市などの対応は、きわめて不十分であると言わねばならないだろう。
 基本的には、同じことが福島県外の「除染」に伴う放射能汚染土壌の処理問題についても言える。しかし、この問題については機会を改めて論じることにしたい。


 次に、「除染」活動とそれへの「ボランティア」の動員(地元住民や県外からのそれ)について。
 この問題を考える前提として、「原子力災害」の「避難指示」における国と自治体の行政的「不作為」とその責任問題をはっきりさせる必要がある。 福島県全体、とりわけ「浜通り」地域の「復興計画」の問題性の根源に横たわる問題なので、ここで触れることにしたい。

⇒「3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える」につづく
・・
双葉町長手記 政府を痛烈批判/「事故収束」宣言 いまだウソ 恥じるべき 安定化、今の状態では無理
 中間貯蔵施設計画 被害者に責任取らすのか 町民の使い捨て許さぬ

2012.01.06東京新聞「こちら特報部」より抜粋)
 福島第一原発事故で全町民が避難した福島双葉町の井戸川克隆町長(65)が、東京新聞に「原発事故を振り返って」と題した手記を寄せた。汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設を同県双葉郡に建設する政府方針に、反発。野田首相の「事故収束」宣言を「とんでもないこと」と強く批判する。手記に込められた井戸川町長の怒りと嘆きの声を届ける。(略)

 「世界最大の原発被害者になってしまったことは大変つらい。終わりの見えない旅。『避難指示』だけの言葉で故郷を離れている。(避難所を)慰問に来られた方が歌う『故郷』は、私たちにはとても耐えられない、悲しい歌になっていることが、皆さんには分かってもらえない。(略)ちり紙に遺書を書いたという方の話を聞いた時、涙が止まりませんでした。多くの方が死を覚悟されたのですね。政府はこのような方をどう思っているのか。本当に日本の恩人です。(略)恥ずかしいのは、いまだにうそをついている人たち。事故は終わっていません。今も、微妙なバランスの中で安定化させている。(略)ものをいわない相手に、五感と経験を駆使して対することは、一瞬の油断もできない。
 膨大な部品の集まりを正常にし、安定化することは今の状態では無理。(「収束」宣言を)とんでもないことと思う。私は認めるわけにはいかない。現場にやる気を失わせてしまわないかと心配。誰もが認める検査プロセスでなければ、信用は得られません」

 細野豪志環境相は先月28日、福島県の佐藤雄平知事と双葉郡の八町村の首長に、除染で出る汚染土壌などの中間貯蔵施設を双葉郡内に設置したいとの意向を伝えた。有力候補地は高線量地域である双葉長と大熊町と言われる。町長は手記で「(放射線物質の)除去もできず住む希望も持てない一番ひどい地域とされる双葉と大熊が、事故の最大の被害者。ここに施設を造れということを、誰にもいわれたくない。
 私たちは誰よりも早く帰りたい気持ちがあり、『放射能をどこかに持っていけ』と加害者に声を大にして言いたい」と訴える。「皆さんは『一番放射線量が高い地域に』、と思うのでしょうか。でも、原因を作った者は誰か。どう責任を取るのか。だれが負担をするのか。被害者に責任はあるのか。被害者に責任をかぶせることができるのか。被害者に『元の生活をするな』と言える人はいるのか。ここから議論したい」と事故の責任を問う。 
 「次世代を担う子どもたちにも聞かなければならない。”被害者不詳”のままで、立地を頼みに来ることを許すわけにはいきません。誰かが『私が責任者です』と名乗り出ても、どうにもならないくらいの規模の世界最大の事故です。『原子力ムラ』の全員が加害者であると思っています。

 放射線物質汚染対処特別措置法が今月、全面施行。除染作業が本格化する。双葉町では「除染はしなければならないが、技術的に確立されていないので、まだ行わない」とする。除染作業は国の責任で進めると言うが、「除染作業に従事する町民がさらに被ばくすることを恐れている。町民が大手企業の下働きで、使い捨てにされることは許しません。町民の皆さんが早く帰りたいと思う気持ちは理解できますが、これ以上被ばくさせるわけにはいかない」と訴えた。
 「私たちは昨年三月十一日から被ばくを繰り返している。これほどの被ばく者を出し続けていて、世界から原子力輸出国として認証されるのか疑問です。国家の恥だと思っています。地域の自然と同様、人間そのものを除染しなければ。(がんを)発症するかしないかの議論で、罪隠しにはならない。自然界以外の被ばくのすべては、要求しない迷惑なものを浴びせられていることになる。専門家と称する多くの方たちの安全基準は、まったく意味がない。被ばくについて安全といった人たちに、賠償を求めなければなりません。皆さん、団結しましょう」
(「たんぽぽ舎」より)

・・・
「国民と思っているか」 野田首相を福島・双葉町長が問い詰める
 福島市で開かれた「原子力災害からの福島復興再生協議会」で8日、東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉町の井戸川克隆町長は「私たち双葉郡民を日本国民と思っていますか。法の下に平等ですか。憲法で守られていますか」と野田佳彦首相に問い詰めたことを明らかにした。
 終了後、井戸川町長が記者団に語った。首相は「大事な国民である」と答えたという。町長は発言について、事故後、双葉町が多くの問題を抱えたままとした上で「あるのは放射能だけ。平等になっていない」と述べた。 また、政府が検討を進めている警戒区域の見直しで、居住できる目安を年間20ミリシーベルト以下としていることに関しては「(20ミリシーベルト以下で)安全と思っている安全委員会の委員の家族に住んでもらって、安全を確認させていただきたい、と申し上げた」と話した。 双葉町は警戒区域に指定され住民が避難している上、役場機能も埼玉県加須市に移転している。(産経)

「福島県外」明文化検討 細野原発相、法令化なども示唆
細野豪志環境相兼原発事故担当相は、東日本大震災から10カ月となるのを前に、河北新報社のインタビューに応じた。福島第1原発事故で発生した汚染土などを搬入するため、福島県双葉郡に設置要請した中間貯蔵施設を最終処分地にしないとの方針について、「(確約を担保するには)何らかの措置が必要。大事なのは政権が代わっても方針が継続されること」と述べ、法令化や閣議決定などでの明文化を検討する考えを示唆した。
 政府は中間貯蔵施設での保管期間は30年以内で、最終処分は福島県外で行うとしているが、県内にはなし崩し的に最終処分地になるとの懸念がある。細野氏は「福島を最終処分地にしない」とあらためて明言した上で、「どういう形(での担保)が納得してもらえるか、地元と協議し判断したい」と話した。  中間貯蔵施設設置を受け入れた場合の立地交付金などの自治体支援策に関しては「具体的な話になったときに条件が出てくると思う。まずは施設の在り方について理解してもらうことが大前提」との認識を示した。
 福島に隣接する宮城県への事故対応支援では「宮城県一律ではなくても、地域ごとに必要であれば県と国がしっかり協議して必要な政策をやる」と強調した。(河北新報)
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 「「(確約を担保するには)何らかの措置が必要。大事なのは政権が代わっても方針が継続されること」と述べ、法令化や閣議決定などでの明文化を検討する考えを示唆した」・・・。
 その通りである。年末になって「冷温停止状態」の政治宣言と「事故収束」宣言の撤回と、第一・第二の全号機の廃炉(のみ)を国や東電に「要請」するだけでは不十分だ。
 知事を始めとする首長、「地方公共団体」とその議会・議員に問われているのは、まず国と東電から「確約」を取ること、次に「協約書」など何らかの公的文書においてその確約を残すこと、さらに「政権が代わっても方針が継続される」よう「法令化や閣議決定などでの明文化」を迫ることである。 
 冒頭でも述べたように、こうした行政手続き上の具体性なき「要請」は、言ってみれば単なる「政治的ポーズ」や「アリバイ工作」と同じである。福島県および「浜通り」の自治体は、これらをクリアした上で、双葉町を含む「原子力事業所」外への「中間」貯蔵施設の建設撤回を申し入れるべきなのだ。

電源政策協議会を欠席へ=中間施設「議論尽くさず」―福島県双葉町
 東京電力福島第1原子力発電所がある福島県双葉町の井戸川克隆町長は8日、同第1、第2原発周辺の同県双葉郡8町村の自治体当局と議会がエネルギー政策などについて話し合うためつくっている「双葉地方電源地域政策協議会」の会合に今後、欠席する考えを明らかにした。同協議会は東日本大震災以前からあり、第1原発の事故で放射性物質に汚染された廃棄物の中間貯蔵施設の設置について検討を始めている。
 福島市内で開かれた原子力災害復興再生協議会への出席後、記者団に答えた。井戸川町長は「十分地元の議論を尽くしてやる会議ならいいが(そうではない)」と表明。また、中間貯蔵施設の双葉町内への設置について、「一方的に話が進むことには納得できない」と語った。双葉町議会も電源地域政策協議会を欠席する方針という。(時事)
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 「正しい方針」だと私は思う。

中間貯蔵施設:双葉郡の首長 福島県知事に交渉参加を要請
 国が福島県双葉郡内に汚染土壌などの中間貯蔵施設建設を依頼したことに関し、同郡8町村長と町村議長で作る「双葉地方電源地域政策協議会」は5日、同県の佐藤雄平知事に対し、県に事務局を設けて国との交渉に主体的に加わるよう要請した。受け入れを巡っては反対論が強い一方、「やむなし」とする意見もあり、調整は難航が予想されている。協議会会長の遠藤勝也富岡町長は「双葉郡だけでは荷が重い問題。知事と一心同体で取り組みたい」と述べた。
 中間貯蔵施設は、福島第1原発事故に伴う除染で生じる汚染土壌などを保管するのが目的。細野豪志環境相が先月28日、買い取りか借り上げの形での国への用地提供を要請した。貯蔵期間は30年以内としているが、地元では「なし崩し的に最終処分場になる」との懸念も出ている。 県側はこの日、8町村との協議の場を設ける方針を説明。佐藤知事は「できるだけ早く意見を集約し、(国に)申すべきことを申していきたい」と応じた。
 4日の仕事始めで設置反対を明言した井戸川克隆双葉町長は、県との会合では「地元の意見をまとめるのに時間がかかる」と含みを持たせた。しかし、終了後には記者団に「他の町村は(直ちには)住む所がない双葉町に要らない放射能を持って来ようとしている」と不信感を示した。
 一方、双葉町と共に第1原発が立地している大熊町の渡辺利綱町長は「除染と連動しており、賛成とか反対とか言える状況ではない」としつつ、「負のイメージを先行させるのではなく、『研究開発も行う』『雇用も生み出す』などと魅力も含めて条件提示してもらいたい」と国の姿勢に注文を付けた。【毎日、乾達、三村泰揮、山本太一】

連合福島が県内の除染ボランティア活動検討へ
 連合福島の影山道幸会長は5日の新春交歓会の席上、連合福島が今後本格化する県内の除染活動へのボランティア参加を検討する方針を明らかにした。 連合福島は東日本大震災後、全国連合と連携し津波被災地でのがれきや汚泥の撤去、郡山市と会津若松市では支援物資の物流支援などのボランティア活動の実績がある。 除汚ボランティアは、震災後の活動を評価した環境省が全国連合に打診。連合福島との間で実施に向けた作業方法や安全確保対策について詰めの協議が行われている。(福島民友)

帰還困難2万5千人、避難の3割…警戒区域再編
 東京電力福島第一原発事故を受けた警戒区域と計画的避難区域の再編で、帰還まで5年以上かかるとみられる「帰還困難区域」が、福島県の関係11市町村のうち7市町村に設定される見通しであることが、政府関係者らへの取材でわかった。 対象は避難者の約3割の約2万5000人に上る。大熊町と双葉町はそれぞれ人口の約9割、約7割の住む地域が含まれており、政府側が周辺自治体に合併を打診したことも判明した。
 政府は、同原発から半径20キロ圏で立ち入りが制限されている警戒区域と、同圏外で年間放射線量が20ミリ・シーベルトに達する恐れがある計画的避難区域を、4月1日をメドに「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に3区分する。(読売)

就労に「踏み出せない」 避難区域の住民
 東日本大震災の被災地で、沿岸部など被害の大きかった一部地域と東京電力福島第1原発事故に伴い、警戒区域や計画的避難区域から避難した住民を対象に給付期間が再延長された雇用保険の給付が今月中旬から、順次終了する。生活再建には将来的な就労は欠かせないテーマだが、原発事故の賠償や見通しの立たない避難生活などの問題が絡み、区域指定された避難者たちは就労に踏み出せない現状にある。専門家は「避難の見通しなど長期的な計画と就労をセットにした対策が必要」と指摘する。
 「東電の賠償や今後の避難生活の問題もあり、仕事探しがなかなか進まない」。福島市の仮設住宅で避難生活を送る浪江町の男性(36)は、再延長されていた雇用保険の給付が今月で終わるが、求職活動に本腰を入れられないでいる。(福島民友)

南相馬市が賠償請求へ 訴訟も視野に東電の責任追及
 南相馬市の桜井勝延市長は5日、原発事故に伴いこれまで市に発生した損害や対応費用、環境回復のための財政出動分などの補償を求め、東京電力に賠償請求を行う方針を示した。市の年頭記者会見で明らかにした桜井市長は「原発事故で、全般的に住民サービスの在り方が変わってしまった。税収が見込めない状況に追い込まれた」とし、今後税収減など一般会計を含めた賠償について弁護士などと相談しながら賠償額などを決め、早急に請求を行う考えを示した。
 さらに「相当な覚悟で弁護団もそろえなければならない」と訴訟も視野に入れていることを示唆し「裁判以前に、東電の誠実さを見ることが何より大切」と、東電の責任を追及する構え。 また、市民の個人賠償についても「市民の生活を支えるため、相談窓口業務を積極的に行い、弁護団などを手当てしていきたい」などと述べ、市民の賠償支援を手厚くしていく考えも明かした。(福島民友)

原発40年で廃炉、東海村長「不十分な改正」
 政府が全国の原発について原則40年以上の運転を認めないとする原子炉等規制法改正案を発表したことについて、茨城県東海村の村上達也村長は7日、報道陣に対し、「年数だけでなく、周辺人口や地震、津波の危険性なども含めて明確にすべき。不十分な改正だ」と述べた。 さらに、改正案に国の審査で運転延長を認める例外を設けていることについて、「骨抜きになりかねず、原発の安全を担保できるものではない」と指摘した。(読売)

東電、10議員を「厚遇」 パーティー券を多額購入
東京電力が電力業界での重要度を査定し、自民、民主各党などで上位にランク付けしてパーティー券を購入していた計10人の国会議員が判明した。電力会社を所管する経済産業省の大臣経験者や党実力者を重視し、議員秘書らの購入依頼に応じていた。1回あたりの購入額を、政治資金収支報告書に記載義務がない20万円以下に抑えて表面化しないようにしていた。  また、東電の関連企業数十社が、東電の紹介などにより、多数の議員のパーティー券を購入していたことも判明した。
 複数の東電幹部によると、東電は、電力業界から見た議員の重要度や貢献度を査定し、購入額を決める際の目安としていた。2010年までの数年間の上位ランクは、いずれも衆院議員で、自民では麻生太郎、甘利明、大島理森、石破茂、石原伸晃の5氏、元自民では与謝野馨(無所属)、平沼赳夫(たちあがれ日本)の2氏。民主では仙谷由人、枝野幸男、小沢一郎の3氏だった。 (朝日)

フランス:原子炉改修に1兆円必要 安全評価報告書(毎日)
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■緊急集会■「原発? No, thank you!」ヨルダンの国会議員・弁護士は訴える

【日時】1月16日(月)18時45分~21時(18時30分開場)
【場所】在日本韓国YMCA 9階国際ホール
(千代田区猿楽町2-5-5 JR水道橋駅より徒歩6分 地図:http://www.ymcajapan.org/ayc/jp/)
【参加費】 800円(資料代込み)※事前申し込みは不要です。直接ご来場下さい。
【発言者】
鈴木真奈美(フリーランス・ジャーナリスト)
モオタシム・アワームレ (ヨルダン国会議員/保健・環境委員長)
ジャマール・ガッモー (ヨルダン国会議員/エネルギー委員長)
ムナ・マハメラー (ヨルダン弁護士)

 日本政府・原発メーカーがヨルダンに対する原発輸出計画を進めています。ヨルダムの建設予定地は内陸部にあり、40キロ圏内に首都アンマンがあるばかりでなく、100キロ圏内に人口過密なパレスチナの西岸地区がすっぽり収まってしまう場所で、大変危険です。原発には大量の水が必要なのに、ヨルダンではそもそも水が不足しています。ヨルダン渓谷は地震のリスクもあり、砂漠での太陽光発電を推進すれば、原発など必要ありません。
 また、日本国内で稼働中の原子炉の停止や廃炉が実現しても、原発輸出が続き、原発産業を取り巻く構造が温存されるなら、それは「脱原発」ではありません。 現在原発事故によって多数の「国内難民」が生み出されている状況は、1947-48年のパレスチナ人社会の崩壊とパレスチナ人の難民化(ナクバ)を思い出さずにはいられません。またヨルダンの人口はそもそも7割がパレスチナ人ですが、ひとたび事故が起これば彼らをさらなる難民化に追い込む原発の建設について、彼らの意思が問われることなく進められていくのは大変問題です。

 上記の点はこれまで日本のなかでも指摘されてきましたが、ヨルダンの国会議員や弁護士のなかにも原発建設に反対している人々が存在します。彼らの声が直接日本社会に伝われば、現在の状況を変える大きな力になるでしょう。そこで1月14-15日の「脱原発世界会議」に合わせて来日するヨルダン国会議員2人と弁護士をお招きし、緊急の集会を開くことにしました。あわせて日本による原発輸出がもつ問題について、ジャーナリストの鈴木真奈美さんにお話し頂きます。

【発言者プロフィール】
鈴木真奈美(すずきまなみ/フリーランス・ジャーナリスト)
原水禁事務局国際、国際環境NGOグリーンピースで核問題、気候/エネルギー問題などを担当してきた。著書に『プルトニウム=不良債権』(三一書房)、『核大国化する日本』(平凡社新書)、訳書に『核の軛』(七つ森書館)など。
モオタシム・アワームレ(Motasem AWAMLEH/ヨルダン国会議員、保健・環境委員長)
医師、地域医療の専門家として、地域における早期診断、環境や職業による健康被害の認識向上、疾病予防を推進。バルカ県諮問委員会委員を経て、現在はヨルダン保健省顧問、健康保険局局長、ヨルダン大学講師を兼務。
ジャマール・ガッモー(Jamal GAMMOH/ヨルダン国会議員、エネルギー委員長)
大学では電気工学の学士号を取得。建設会社の元役員。ヨルダン技術者協会(JEA)およびヨルダン建設業協会(JCCA)会員。
ムナ・マハメラー(Mona MAKHAMREH/ヨルダン弁護士)
弁護士歴15年。1997年に独立し事務所を設立。人権、非暴力、小型兵器、異性間での暴力、ミレニアム開発目標などの分野で活動。核兵器廃絶国際キャンペーンほか中東地域および国際的な反核運動に参加。

【主催】ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉
【共催】FoE JapanJACSES(「環境・持続社会」研究センター)JSR (アル・ジスル-日本とパレスチナを結ぶ)JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)NINDJA(インドネシア民主化支援ネットワーク)福島原発事故緊急会議PARC(アジア太平洋資料センター)(1月8日現在)
【連絡先】ミーダーン〈パレスチナ・対話のための広場〉
[郵便物送付先]〒162-0823 東京都新宿区神楽河岸1 - 1東京ボランティア・市民活動センター メールボックスNo.114
[メールアドレス]midan.filastine@gmail.com
[URL] http://midan2006.web.fc2.com
[Blog] http://midan.exblog.jp
[郵便振替口座]00160-9-353912(口座名義:ミーダーン)
【この集会に関する問い合わせ】080-3426-9415

2012年1月6日金曜日

相馬と南相馬で考えたこと(2)

相馬と南相馬で考えたこと(2)

 幾分概念的に言えば、私が考えたことの一つは、自然災害と原発災害の「複合災害」に見舞われた地域の、被災・被曝者支援において、NGOが果たすべき役割/責任とは何か、という問題である。
 とりわけ、自治体の行政の在り方や「復興計画」に問題点を多く感じるとき、私たちは、従来のNGO/「市民社会」論において自明のごとく語られてきたような「行政とNGOの連携・協働」などと簡単には言えなくなる。

 このことを私は、昨年12月17日のNGOシンポでも報告された、福島に入ったNGO/NPOが東日本大震災の支援活動に取り組んできた全NGO/NPOに占める割合は、全体のたった11%程度にしか過ぎないという、冷厳たる現実をどのように考えるのか、というもう一つの問いに照らしながら、考えていた。

⇒「3・11福島大集会の〈アジェンダ〉を考える」につづく
〈予め読んでおいてもらいたい関連・資料サイト〉
⇒「南相馬市復興計画」のサイトと「計画の全体」(以下、「復興計画」より)
・・
新産業創出(再生可能エネルギー基地の設立と関連産業の誘致、放射線研究産業の誘致、特区制度による新規参入の支援)
・特区制度を活用し、新規参入する際の規制緩和や税財政上の優遇措置を講じることにより、新たな企業の参入を促し、新産業の集積を図ります。
・エネルギーの地産地消地域“自家発電のまち”を目指し、バイオマス発電、太陽光発電、風力発電などの“再生可能エネルギー”基地を形成するため、関係する機関や企業等の誘致を推進します。
・市民の安全・安心を取り戻すため、低レベル放射線の影響解明や被ばく医療、放射線治療の提供を行う施設の整備や農林水産試験研究等の関係する機関、企業等の誘致を推進します。
・地域の雇用増加と経済の活性化のために、半導体、輸送用機械、医療・福祉機器などの企業誘致を推進します。
【基本施策3-2】
既存産業の強みを生かした新たな産業創出
・地域の強み産業である機械金属加工産業の集積を図り、ロボット工学など新分野の技術を蓄積するとともに、新たな応用分野への企業進出を推進します。
安定経営を目指した複合経営の促進(EDEN計画)
・植物工場や花卉工場などを活用した農産物の生産、大規模化や複合化などによる農業経営の強化、加工・販売、エネルギー供給などを一体的に行う複合経営の促進により、農林水産業の再興、地域産業の活性化、通年雇用の実現を目指します。
・・
⇒「復興計画とグローバル企業  ~南相馬市の場合~」(「福島 フクシマ FUKUSHIMA」より)
⇒「村田[南相馬市副市長]メールと旧内務省(1)」(亀田総合病院  小松秀樹 2011年12月26日 MRIC by 医療ガバナンス学会)
⇒「同上(2)」
・・・

【岡本、阿部、山口の収賄3教授はストレステスト委員を辞任せよ!】
杉原浩司(福島原発事故緊急会議/みどりの未来)

 先に、「ストレステストに係る意見聴取会」司会進行役の岡本孝司教授が三菱重工業から献金(賄賂!)を受け取っていたことをお伝えし、辞任を求める要請を呼びかけました。既にご協力いただいた方はありがとうございます。
 保安院・電力会社の側に立って強引な進行を行う岡本委員に真っ先に退場してもらうべきだと思いますが、この聴取会では岡本教授を含めて3人もの委員が原発メーカーの三菱重工(審査対象の原子炉の多くを製造)からの献金を受け取っています。委員は計11人ですから、脱原発派である後藤政志、井野博満の両委員を除く9人の御用学者のうち、何と3分の1が「利益相反」(=「一人の人間が泥棒と警察の両方をやること」by 川井康郎さん)というわけです。こんな金まみれの委員たちが、危険な原発再稼働の前提とされるストレステスト審査への意見聴取に関与することは到底認められません。「3・11」後の現在、こうした状態を許すことはあり得な
いことです。

◆岡本孝司 東京大学 工学研究科原子力専攻教授
三菱重工業 200万円
「多忙につき答えられない」(大学広報を通じて回答):朝日1/1記事
◆阿部 豊 筑波大学大学院 システム情報工学研究科教授
三菱重工業 500万円
「審議では専門の立場から中立な意見を述べてきた」:朝日1/1記事
◆山口 彰 大阪大学大学院 工学研究科教授
(株)ニュークリア・デベロップメント(三菱重工業系) 3,385万円
【参考】井野博満委員の12月22日意見聴取会への質問書より
「報道によれば、山口彰委員は、(株)ニュークリア・デベロップメントから『受託研究』の名目で3,385万円の研究費を受け取っている。ニュークリア・デベロップメントは、現在審議中の大飯原発・伊方原発・泊原発などの主製造メーカである三菱重工の関連企業である。これが事実であれば、利益相反の事例に該当する可能性があり、研究者倫理としても委員にはふさわしくないと考えるが、保安院の判断をお聞きしたい。」

★引き続き、岡本、阿部、山口の3委員を辞任させるよう、要請を集中してください。原発に批判的な研究者との入れ替えや、今までの議論を白紙に戻し一からやり直すことなども要請してはどうかと思います。 また、保安院に加えて、枝野幸男経産相にも要請されるようお願いします。6日(金)午前9時からの意見聴取会が迫っていますので、まだの方は可能な方法で急ぎの働きかけをぜひお願いします。新聞等への投書も有効です。
【原子力安全・保安院】
代表 (TEL)03-3501-1511/ 広報課 (TEL)03-3501-5890
原子力安全技術基盤課(ストレステストを担当)
(FAX)03-3580-5971 (TEL)03-3501-0621
メールによるお問い合わせ:ご質問・ご意見(保安院HP)https://wwws.meti.go.jp/nisa/index.html
【枝野幸男経産相】
[国会事務所] (FAX)03-3591-2249 (TEL)03-3508-7448
[地元・大宮事務所] (FAX)048-648-9125  (TEL)048-648-9124

2012年のはじめに: 脱原発の〈思想〉と〈行動〉が試される年

2012年のはじめに: 脱原発の〈思想〉と〈行動〉が試される年


 2012年のはじまりに、新年を祝うお決まりの文句は控えたい。国際的にも、国内的にも、私たちの目の前には、祝うより解決すべきこと、そのために考えるべきこと、二年越しの「宿題」が山積していると思うからだ。私はむしろ、「祝うべきことなど何もない」="No hay nada que celebrar."という言葉を、厳粛な気持ちで噛みしめたいと考えている。

 "No hay nada que celebrar." アメリカ大陸の先住民族/民衆の運動体が、各国の「独立記念日」や「コロンブス・デー」など、国を挙げた祝賀行事に対して抗議の意思を示すために使ってきたフレーズである。私自身が今年に持ち越してしまった、ということはおそらく〈脱原発〉派全体もまたこれから真剣かつ真摯に向き合わざるをえない、と思える「宿題」の数々を列挙しながら、新年の挨拶にあえてこのフレーズを持ち出した理由を書き記しておこうと思う。

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 2012年は〈脱原発〉の思想と行動が試される年となる。
 思想の質と、それに規定された具体的な行動の中身が試される年になる。
 様々な方向性と内容を伴った、その意味では統一性も一貫性もない〈脱原発〉運動--私はそれをむしろポジチブに捉えている者の一人であるが--から、「排除の思想」を排除しつつ自らの思想の境界を広げ、深めること、その上でどこに、そして何にプライオリティをそれぞれが設定するかという、きわめてアクチュアルかつ困難な〈問題〉群に直面する、文字通りの「正念場の年」になるだろう。

 大状況的なリアリティから言えば、私たちは「減原発」による「原発+再生可能エネルギーのベストミックス」と原発輸出促進を通じて、「3・11」からの国家的「復興」とその先に広がる「経済成長」を夢想する民主、自民、公明の三大既成政党+官僚機構で成り立つ政治権力の構造を変えうる展望を見いだせないでいる。
 つまり、民主党が政権の座に今年いっぱい居座ろうが、万が一に解散→総選挙となって自民を中心とした政権、あるいは公明がいずれかと連立を組み政権に加わろうが、この「構造」が変わりようがない現実を引きずりながら私たちは新年を迎えてしまった、ということだ。

 政党政治や政局の動向に関する分析は後回しにしたい。
 最初に、民主党および官僚機構が「「減原発」による「原発+再生可能エネルギーのベストミックス」と原発輸出促進を通じ、「3・11」からの国家的「復興」とその先に広がる「経済成長」」を夢見ているという点について、簡単に触れておこう。


 まず、「減原発」による「原発+再生可能エネルギーのベストミックス」について。
 資源・エネルギー庁の「新しいエネルギー基本計画に向けたご意見を募集します」のページには次のような一節がある。
・・
 経済産業省資源エネルギー庁では、幅広く有識者の方々から新しい基本計画策定のためのご意見を聴く場として、総合資源エネルギー調査会に基本問題委員会が設置され、平成23年10月から議論が開始されております。 「革新的エネルギー・環境戦略」の策定を行うエネルギー・環境会議と連携しつつ議論が進むこととなっております。
 また、平成24年春頃には、望ましいエネルギーミックスの選択肢を提示し、国民的議論につなげていく予定です。
・・

 ここで言われている「望ましいエネルギーミックス」が、私が言う「「減原発」による「原発+再生可能エネルギーのベストミックス」のことである。そこでは将来的に一部廃炉にした原子炉を「絶対安全な(第四世代)原発」に交替させることをも含めて、つまりそれを選択肢から排除せず、今後の日本の中長期的な「エネルギー基本計画」なるものが構想されている。このことをまず私たちは踏まえておく必要がある。

 「幅広い国民の皆様からのご意見」の圧倒的多数は脱原発であるにもかかわらず、原発維持・推進を大前提にした「望ましいエネルギーミックスの選択肢」を構想しているのが経産官僚なのだ。

 「エネルギー・環境会議」の基本方針(案) 〔概要〕。(2011年12月21日
・・
(2)原子力政策、エネルギーミックス、温暖化対策に関する選択肢提示に向けた基本方針
① 原子力政策に関する選択肢の提示に向けた基本方針
原子力のリスク管理を徹底するとの方針に基づき選択肢を提示する
○ 原子力発電については、相当程度の社会的費用があり、世界最高水準の安全基準とその客観的かつ厳格な運用を確立するなど、安全対策を抜本的かつ計画的に立て直す。
また、賠償等のスキームを、国際的な動向と調和を図りつつ、整備する。

中長期的な原子力政策の在り方については、核燃料サイクル政策も含む原子力政策の徹底検証を行う中で、安全、環境、エネルギー安全保障、経済性などの論点を整理した上で、選択肢を提示する。
・・

 たしかに「エネルギー・環境会議」は、口先では、「脱原発」「原発推進」のいずれの立場にも立たず、「白紙」から「抜本的に」国の「エネルギー基本計画案」をまとめ、今春「提言」すると言っている。
 しかし、すでに「中長期的な原子力政策」という表現があますところなく示しているように、この会議の審議そのものがあくまでも「脱原発」ではなく「原発推進」の立場に沿って行われてきた/いる。野田政権登場時点から何度も強調してきたように、この点に関する野田政権・経産省・「エネルギー・環境会議」に対する幻想に未だとらわれている人がいるとしたなら、ただちにその幻想を捨て去るべきだろう。 


 上の3を押さえたうえで、福島・宮城・青森三県の「復興計画」の中身を見てみよう。
 あわただしかった年末・年始の数日間、私はこれら三県の「復興計画」と、南相馬市のそれを読んで過ごした。 もちろん、これらのみを読んでいたわけではないし、好んでそうしたわけでもない。クリスマスの三連休に「相馬と南相馬で考えたこと」がこれらに目を通すことを余儀なくさせたのである。(⇒南相馬市の「復興計画」については、「相馬と南相馬で考えたこと(2)」において触れることにする。)

⇒「福島県復興計画(第1次)」(今後10年間)とその「概要」版
⇒「青森県復興プラン/青森県復興ビジョン」とその「概要」版
⇒「宮城県震災復興計画」とその「概要」版
⇒関連サイト「東日本大震災復興対策本部

 できるだけ時間を取り、福島・宮城・青森三県の「復興計画」あるいは「ビジョン」の、せめて「概要」だけは目を通してほしい。そうすれば自ずと、以下の二点が理解できるはずだ。それらは、

1)福島県は脱原発宣言を行い、福島第一・第二すべての廃炉を国と東電に要請し、「原発に依存しない社会」を明言しつつも、宮城・青森両県については県内の原発および原子力関連施設の存続を前提にして「復興計画」が策定されていること、
2)福島県とその他二県との上に述べた違いはありつつも、また表現上の違いはありつつも、県としての具体的な「再生可能エネルギー推進」の中身は、三県とも非常に似通ったものになっていること、である。

 たとえば、青森県の「復興ビジョン」の、「Ⅳ 視点と中長期的な取組の方向性」の
「(4)再生可能エネルギーの導入推進による産業振興と持続可能な低炭素社会の実現」の次の内容を福島県・宮城県のそれと対照してみてほしい。

再生可能エネルギーの導入推進と産業振興(太陽エネルギー、風力発電、地中熱・温泉熱、バイオマス、廃棄物エネルギー、コージェネレーション関連(燃料電池、LNG冷熱利用等)、海洋エネルギー)
持続可能な低炭素社会の実現(全県民的取組の加速化、夏季及び冬季の省エネルギー対策、設備導入促進のサポート体制づくり等)
 

 この問題を考えるにあたっては、さらに「参考資料」として経産省がまとめた2012年度の「資源・エネルギー関連予算案等のポイント」を参照することをすすめたい。 ほとんど同じ内容と言ってよい三県の「復興計画」に組み込まれた「再生可能エネルギー推進」が、経産省による「ポイント」の「3.再生可能エネルギー・省エネルギー等の導入支援・最先端の技術開発」と完璧に対応したものであることが透けて見えてくるはずである。


 福島県の「復興計画」の問題点--〈脱原発〉の思想と行動、その課題に引きつけて

 続きは後日に。(未完)
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試験再開準備始まる/再処理工場(東奥日報)
解説:使用済み核燃料・直接処分コスト試算隠蔽 原子力ムラの異常論理(毎日)
原発の再稼働重点 東北電社長「地域理解得る」(河北新報)

「原発問題に対峙しようとしない」と宮城知事、国を糾弾(河北新報)
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 「原発事故の対応は県境で区切る問題ではない。汚染レベルによって対応しなければ、宮城県民としては大きな不満が残る結果になる」とまで語りながら、女川原発の再稼働・存続問題を含め「原発問題に対峙しようとしない」のは、知事および県、県議会も同罪ではないだろうか?

シンポジウム「パレスチナと沖縄を結ぶ──民族自決権と開発」報告

シンポジウム「パレスチナと沖縄を結ぶ──民族自決権と開発」報告

 2011年12月3日、『脱「国際協力」 ― 開発と平和構築を超えて』(新評論)の出版記念イベントとして、上記タイトルのシンポジウムが京都・龍谷大学深草キャンパスにて行われた。
 内容は、パレスチナ問題を扱った第一部と沖縄問題を扱った第二部とに分かれ、第一部では、私が「パレスチナ/イスラエルの脱植民地化と日本:アパルトヘイト政策と開発政策の共謀」と題した報告を行い、続いてガザ出身のパレスチナ人で、長年、国際援助機関で働かれた経験をもつイヤース・サリーム氏から「イスラーム社会における市民運動:その特徴とパレスチナ問題への影響」と題した報告を行った。
 第二部では、龍谷大学教員の松島泰勝氏から「琉球の自己決定権──開発による米軍基地押し付け政策からの解放を目指して」との報告があった。

 私の報告は、西岸地区の開発計画、とりわけヨルダン渓谷地域で日本が進める「平和と繁栄の回廊」構想がイスラエルの占領政策を補完する役割を担ってしまっているという点について指摘し、そうした「上からの開発」に対するオルタナティヴとして、現地NGOによる、小規模ながらも住民参加にもとづいた開発プロジェクトが行われている状況を紹介した。
 現在、ヨルダン渓谷では、パレスチナ人のベドウィンや農民が日々土地を奪われ、追い立てられている。「回廊構想」はこうした現実を黙認しつ、自然と共存してきた彼らの生活スタイルとは全く別の経済モデル――輸出指向型大規模農業――をこの地域に導入しようしている。イスラエルがこの構想を承認したのは、この開発モデルが彼らの占領政策と両立すると考えたからに他ならない。
 報告の後半では、むしろ、渓谷で活動するヨルダン渓谷連帯委員会などの草の根NGOが非暴力直接行動を通じ、果敢に実践している、住民のニーズに即した――ということは、イスラエルの軍令に違反する――学校や水道などの基本インフラ整備の取組にこそ、「持続可能な開発モデル」を見出せるのではないかということを強調した。

 続くサリーム氏は、1週間前にトルコとガザにおけるフィールド調査から帰ってきたばかりということもあり、その報告を中心に話をされた。
 彼は、現在ガザで人道支援活動を行っているIHHというトルコの人道支援団体の取組とその意義について語った。2010年5月に起きたイスラエルによるガザ支援船襲撃事件で9名の犠牲者を出したIHHは、ガザ地区で大きな共感を集めた。その後、IHHをはじめ、いくつものトルコのNGOがガザで活動するようになったという。また、トルコにおいても、この事件を契機にパレスチナに対する関心が非常に高まっているという。
 トルコでは、イスラームの価値にもとづく人道支援活動が非常に活発になっており、パレスチナのみならず、アジア・アフリカに活動範囲が拡がっている。サリーム氏は、こうした新しい展開の背景には、イスラームの価値観の中で受け継がれてきた市民活動や慈善事業の歴史があることを指摘された。
 エジプト革命に示された、この地域の民衆の力の根底には、アラブやイスラームといった国家の垣根を越えた重層的なアイデンティティと人の交流のあり方があるということを強く意識させられた、当事者ならではの報告であった。

 第二部の松島氏は、琉球(松島氏は、沖縄「本島」だけでない島嶼全体を視野に入れることの重要性を強調した表現として琉球という言葉を選ばれている)における開発プロジェクトの問題性について、脱植民地化という観点から論じられた。
 まず、日本の官庁主導の開発計画が、これまで琉球の地域経済を疲弊させ、環境破壊を進めるなど、地元のニーズに反するかたちで進められてきことを指摘され、さらに、そうして育成されてきた観光産業やIT産業が、地元産業ではなく日本側の資本の利益に貢献するというかたちで植民地経済が形成されてきたと論じられた。 特に、1995年の沖縄少女暴行事件があった後、開発計画が米軍基地の押し付けと表裏一体のかたちで進められてきたことについて厳しく批判された。
 また、松島氏が、地域の文化の重要性を強調され、人々が自分の住む地域に魅力を感じることができなければ、仮に基地がなくなったとしても地域経済は立ち行かないという趣旨の発言をされていたことも印象に残った。地域の人々と協働しながら、実践と研究を進めてこられた松島氏ならではの言葉だと感じた。

 第一部・第二部を通して強く感じたことは、漠然と思っていた以上に、沖縄とパレスチナが経験してきた植民地化の歴史と現在抱える問題には、多くの共通点があるということである。いずれの地域も、現実として自決権を奪われた植民地であるにも関わらず、占領者である日本、あるいはイスラエル側からは植民地として認識されていないという点、また、そのいずれもがアメリカの軍事戦略のなかで翻弄されてきたという点において共通している。そして、そうした不当性を覆い隠す手段として開発プロジェクトが実行されてきたものの、それらは、当該地域住民の自決権を無視した、押し付けの開発にならざるを得ないために必然的に失敗してきたという点でも共通している。
 さらに、そうした現実に対し、沖縄でもパレスチナでも、草の根の地域づくり、そして反基地・反占領の非暴力直接行動が実践されているという点においてもまた、共通している。このような共通性は、単なる偶然ではなく、沖縄とパレスチナが過去100年以上にわたって経験してきた植民地主義の歴史がもつグローバルな性格に根ざしたものだと考えられる。
 現在、日本政府が沖縄の自決権を踏みにじりながら、その一方で、パレスチナにおけるアパルトヘイト政策を容認する姿勢を取り続けているという事実も、そうした植民地主義的グローバリズムの一端を示しているのだと考えられる。

 司会・コーディネーターの中野憲志氏は、こうした植民地主義と開発政策とが結びついた状況が、中南米においても共通して見られてきたことが指摘され、第二次大戦後の新たな植民地主義のあり方として広範に見ることができることを指摘された。かつては、そうした状況を指す言葉として新植民地主義という言葉が用いられたこともあったが、最近ではほとんど使われなくなった。そうした事実の中にも、現在、パレスチナと沖縄において同時代的に見られるある種の政治的経済的な行き詰まり状況が表現されているように思われる。
 おそらく、この局面を民衆の側から打破するためには、それぞれの地域においてグローバルな視野と連帯をもって、草の根の実践を広げていくこと、その中から新しい共生の論理や文明観を形成することが求められているのだと思われる。その実践例が、今回の3つの報告それぞれにおいて示されていたように思う。
 日本においては、そうした脱植民地化のための具体的実践に学びながら、まずは、自分達自身の生活や文明観の中に内在する植民地主義を問い直すことから始めなければならないとあらためて感じた。

役重善洋(パレスチナの平和を考える会

「批評する工房のパレット」内の関連ページ
⇒「基地と原発、振興開発と住民の〈自己決定権〉