2009年7月25日土曜日

ソマリア: PKOが内戦の当事者に---自衛隊と国連PKOの行方

ソマリア: PKOが内戦の当事者に---自衛隊と国連PKOの行方

日本のマスコミのソマリア報道は、そのほとんどが「海賊対策」と称した自衛隊の「派遣」、特に武器使用の規制(撤廃)をめぐる問題に集中している。

 そんな中、ソマリアの現政権と反政府武装勢力との戦闘行為に、アフリカ連合(AU)の平和維持軍が政府側に与し、武装勢力のアル・シャバーブと戦闘を行ったことが、二週間前の朝日新聞に掲載された。

 これをぼくらはどのように考えればよいのか。最も重要なことは、国連やAUなど地域機関のPKOの、いわゆる「政治的中立」原則が、なし崩し的破棄されてるようになっていることである。「イスラム武装勢力」や、「テロリスト」であれば、PKOが派遣先の国の内戦・紛争に、政府側に味方をして介入する、というパターンである。

 事実上の国連PKOであるアフガニスタンの「国際治安支援軍」(ISAF)が、中立的立場を踏み越えて、タリバーンとの戦闘を行ってきたことや、イラクにおける多国籍軍の役割も同じ性格の問題をはらんできたが、「PKO平和五原則」など、もはや通用しなくなっていることを、ぼくらはこうした事態の中に読み取ることができる。(ISAFは、一般に「国際治安支援部隊」と訳されるが、'force'は「部隊」ではなく「軍」と訳すほうが実態に即している。)

 下の朝日新聞の記事においても、PKOの武器使用の問題にこの問題が解消されているように読めてしまうが、そういうレベルの問題で済ましてしまって、ほんとうによいのだろうか。

 自衛隊が、国連PKOの名において、他国の内戦に直接介入する日が近づいている。

ソマリア AU平和維持部隊も交え戦闘、43人死亡
2009年7月12日【ナイロビ=古谷祐伸】asahi.com

ソマリアからの報道によると、首都モガディシオで12日、暫定政府軍とイスラム武装勢力との間で戦闘が起き、双方で少なくとも43人が死亡した。駐留するアフリカ連合(AU)の平和維持部隊も、暫定政府側に立って戦闘に加わったという。

 ロイター通信などによると、ソマリア南部を実質支配する武装勢力「シャバブ」が暫定大統領官邸から約1キロの地点まで侵攻したため、戦闘になった。暫定国会の議員によると、死者はシャバブ側が40人、暫定政府軍側が3人という。

 AP通信によると、AU部隊の戦闘参加は07年3月の駐留開始以来初めて。AU部隊は、無政府状態が続くソマリアで正式政府の樹立を目指す暫定政府を支援するため、大統領官邸の警護などに就いている。自衛にしか武力は使えず、今回は「部隊が直接の危機にさらされたため」(AU部隊報道官)としている。