2009年4月30日木曜日

中央即応連隊と集団的自衛権の行使

中央即応連隊と集団的自衛権の行使

中央即応連隊を派遣 ソマリア
陸自 哨戒機警護40人、編成後初の任務

2009年4月24日 東京新聞

ソマリア沖の海賊対策に関連して、アフリカのジブチに派遣される陸上自衛隊の部隊は海外活動を専門とする中央即応集団直轄の中央即応連隊(宇都宮駐屯地)となることが二十三日、分かった。二〇〇八年三月に新規編成されて以来、中央即応連隊が実任務に就くのは初めて。

五月にジブチ空港に派遣され、アデン湾の洋上監視を開始するP3C哨戒機二機の機体を警備する。派遣されるのは中央即応連隊の一個小隊(約四十人)。〇七年十二月、自衛隊の海外活動が本来任務に格上げされたのを受けて、優秀な隊員ばかりを集めた「オールスター派遣」(陸自幹部)をやめ、常設部隊を送り込むことになった。

持参する武器は駐屯地警備で使用するのと同じ小銃、拳銃のほか、機関銃も検討。「正当防衛・緊急避難」を根拠に武器使用し、P3C哨戒機を防護する際の発砲は、自衛隊法九五条の「武器等を防護するための武器使用」を適用する。

ジブチ空港には米軍のほか、フランス、ドイツ、スペイン軍の哨戒機も置かれているが、自前で機体警備を行わない軍もある。火箱芳文陸上幕僚長は二十三日、「陸上自衛隊には海外活動の知見があり、海上自衛隊を補完できる」と派遣の意義を強調した。

中央即応連隊はテロ・ゲリラに対応する中央即応集団の直轄部隊として〇八年三月、宇都宮駐屯地に編成された。隊員は約七百人。本部管理中隊のほか、三個中隊がある。隊員は格闘術や体力に優れた精鋭を集めた。
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麻生首相 集団的自衛権行使の解釈変更を本格検討へ
4月24日産経新聞

麻生太郎首相は23日、安倍晋三首相(当時)の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)で座長を務めた柳井俊二元駐米大使と首相官邸で会談し、集団的自衛権の行使を違憲とする現行の政府解釈について意見を聞いた。北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射や、海上自衛隊による海賊対策の本格化を受け、集団的自衛権を行使できるように解釈変更が必要な状況が差し迫っていると判断したとみられる。首相が解釈変更に踏み切れば、日米同盟の強化や国際貢献に向け、大きな一歩を踏み出すことになる。

会談には、柳沢協二官房副長官補(安全保障担当)も同席した。柳井氏は安保法制懇の議論の経緯をたどりながら、解釈変更が喫緊のテーマであることを説明したという。会談後、首相は記者団に対して、「安保法制懇の話がそのままになっているので話を聞いた。長い文章なので勉強しなければならないと思っている」と解釈変更に前向きな姿勢を示した。再議論の必要性については、安保法制懇が平成20年6月に報告書を福田康夫首相(当時)に提出していることを踏まえ、「きちんとした答えは作られており、内容もまとまったものがある」と述べた。

安保法制懇の報告書は、
(1)公海における米軍艦艇の防護
(2)米国を狙った弾道ミサイルの迎撃
(3)国際的な平和活動における武器使用
(4)国連平和維持活動(PKO)での他国部隊の後方支援-の4類型について、集団的自衛権の行使を認めるなど政府解釈を変更すれば、現憲法のまま実施できると結論づけた。

しかし、福田首相(当時)は記者団に「(解釈を)変える話などしたことはない。報告は終わったわけだから完結した」と語り、解釈変更を否定。安保法制懇の報告書は封印されたままとなっていた。

一方、麻生首相は首相就任直後の平成20年9月26日、米ニューヨークで「基本的に解釈を変えるべきものだと言ってきた。大事な問題だ」と述べ、いったんは解釈変更に前向きな考えを表明したが、10月3日の参院本会議では「解釈について十分な議論が行われるべきだ」と答弁し、早急な変更には慎重な姿勢を示した。

現行の集団的自衛権に関する政府解釈は、昭和47年10月の田中角栄内閣で「わが国は集団的自衛権を有しているとしても国権の発動としてこれを行使することは許されない」という政府見解で示された。

■集団的自衛権 同盟国など密接な関係にある他国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていなくても、自国への攻撃だとみなして実力で阻止する権利。国連憲章51条で、主権国家の「固有の権利」と規定され、国際法上の権利として広く認められている。
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容認論が再浮上 集団的自衛権行使
2009年4月30日 東京新聞朝刊

政府・自民党内で、憲法解釈で禁じられた集団的自衛権行使を認めるべきだとの議論が再浮上している。党内のタカ派議員が北朝鮮の弾道ミサイル発射を機に仕掛けたもので福田政権以降“お蔵入り”になっている解釈改憲を再燃させたい思惑が見え隠れする。

仕掛け人は、首相在任中に集団的自衛権行使問題に取り組んだ安倍晋三元首相。安倍首相時代に設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で座長だった柳井俊二元駐米大使が二十三日、「憲法九条は集団的自衛権行使を禁ずるものではないと解釈すべきもの」とした懇談会の結論を麻生太郎首相に説明。同日夜には安倍氏自らが首相に対し、憲法解釈を変えることを自民党マニフェストに盛り込むよう進言した。

集団的自衛権とは、同盟国などへの武力攻撃があった場合、自国が直接攻撃を受けていなくても、その攻撃を実力で阻止する権利。政府は国際法上、権利は持っているが、憲法解釈上、行使は許されないとしている。米国を狙った弾道ミサイルの迎撃も違憲とされ、自民党の国防族議員を中心に集団的自衛権の行使を認め、日米が連携して「北の脅威」に対抗すべきだとの意見が出ている。

ただ、麻生政権がこの問題に本腰を入れれば、近隣諸国の反発は確実で、北朝鮮問題での中韓両国との連携にはマイナス。党内には保守色の強い政策を前面に出し、負けた二〇〇七年参院選の記憶も残る。首相も「よく勉強させていただきます」と述べるにとどめている。 (荘加卓嗣)
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参考ブログ⇒「憲法九条の死文化と安保---国家と「自衛権」をめぐって」

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