2009年4月6日月曜日

オバマは「核なき世界」を実現するか?

オバマは「核なき世界」を実現するか?

 ぼくは、何でもかんでも米国のやることに反対する「反米主義者」ではないし、皮肉屋でもない。けれども、米国政府のいうことを簡単にまに受けるほど、ナイーブな人間でもない。
 昨日報道された、オバマの「核なき世界」構想は、それを実現する意思を本当に米国が持つとしたら大歓迎ではあるが、ぼくにはどうもそうとは思えない。

 もちろん、米国が戦略核兵器をある程度削減することは十分ありえるだろう。しかしそれは、未曾有の経済危機に見舞われ、ブッシュ政権の核軍拡路線の戦略的かつ財源的な見直しを迫られたオバマ政権が、軍事戦略全体の方向転換をはかろうとする中から出てきた既定の方針であり、米軍自体の軍縮を推進しようというものではない。
 「使えない核」「必要がなくなった核」を米ロ協調路線の下で、できればイギリス、フランス、中国をも巻き込んで「処分」しようとしている程度のものでしかない。一基でも戦略核がなくなること自体は良いことであるが、だからといって大きな期待を抱くほどことは何もない、といわなければならないだろう。

 その証拠に、オバマ政権は二〇一〇年度のペンタゴンの予算において、前年度比3%増の予算案を策定し、連邦議会で通そうとしている。オバマの米国は軍縮に向かっているのではないのだ。
 では、どこに向かっているのか。ワシントン・ポストの"America at War"の記事を読んでみよう。その中に、"Gates Planning Major Changes in Defense Programs, Budget"という記事がある。そこでは、オバマ政権がロシアや中国などとの「伝統的なライバル国との大規模な戦争から、counterinsurgency programs(叛乱撲滅作戦)」、すなわち対テロ戦争に全面的にシフトし、それに応じた米軍の再編成と予算配分をすると書かれている。
 要するに、使えなくなった、維持するだけで財源を浪費する金喰い虫の核は処分するが、その分、アルカーイダとタリバーンの徹底抗戦派に対しては予算を増やし、今まで以上に対テロ戦争にまい進する、と言っているのである。この世界経済危機と米国の財政赤字の時期に、である。

 日本のマスコミも、こうした事実をきちんと踏まえ、オバマの「核なき世界」構想がはらんでいる問題点を分析した上で報道する義務があるのではないか。そうでないとオバマ政権と核軍縮に対する根拠なき、過剰な幻想を振りまき、人心を欺くことになるだけである。

・・・・・・・ 
オバマ氏「核なき世界」へ新構想 世界核安保サミット主催へ
【プラハ5日共同】

オバマ米大統領は5日、チェコの首都プラハで演説し、公約に掲げる「核兵器のない世界」の実現に向けた包括的構想を初めて示した。1日の米ロ首脳会談の合意に基づき、両国の戦略核をさらに減らす新条約を年末までに策定、これをてこに大胆な核軍縮を進める。核拡散の防止策を探る「世界核安全保障サミット」を米国が主催する意向も表明。

核拡散防止条約(NPT)は非核保有国の核開発を禁じるのと引き換えに、核保有国である米ロなど5大国に「誠実に核軍縮交渉を行う義務」を課している。保有国側が守らなければ、非核保有国が核開発に乗り出す口実を与え、NPTの弱体化に拍車を掛けることから、模範を示した形。

大統領は新構想を「既存の核兵器を削減し、究極的には廃絶する」ための提案と位置付け、米ロなどが真剣に核軍縮に取り組めばイランや北朝鮮に核開発断念を迫る上で説得力を持ち、核拡散防止に寄与すると期待。しかし、北朝鮮は演説直前に「人工衛星」名目で長距離弾道ミサイルを発射、出ばなをくじかれた。大統領はこのほか、多国間条約に後ろ向きだったブッシュ前政権の政策を転換、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准や、核兵器原料の生産を禁止する「兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約」の交渉開始を目指す。

NPT強化策としては
(1)国際原子力機関(IAEA)の査察権限強化
(2)国連安全保障理事会への即時付託などNPT違反国への罰則導入
(3)核物質を国際的に一元管理する「核燃料バンク」支持-などを提案。

・・・・・・・

米、軍事費8兆円追加へ イラク・アフガン大統領、議会に要請
2009年4月10日東京新聞【ワシントン=嶋田昭浩】

オバマ米大統領は九日、米国が取り組んでいる軍事、外交、情報活動のため、総額八百三十四億ドル(約八兆三千四百億円)に上る追加支出の承認を議会に求めた。

特に、アフガニスタン・パキスタン国境の治安状況は「緊急」な対応が必要と強調し、追加支出額の約95%(七百九十億ドル)はイラクやアフガン・パキスタン国境方面の軍事作戦に充てるとしている。厳しい財政事情を踏まえ、六日にはゲーツ国防長官が、前政権で聖域だった兵器調達の見直し計画を発表したばかり。大規模な追加軍事支出は、米国内から反発も受けそうだ。

オバマ大統領は、ペロシ下院議長あての手紙で「(アフガンの反政府武装勢力)タリバンは復活し、(国際テロ組織)アルカイダはアフガン・パキスタン国境の根拠地から米国に脅威を与えている」と指摘した。

米の国防予算案4%増、対テロ戦重視に組み替え【読売新聞・ワシントン=小川聡】

米国防総省が7日発表した2010会計年度(09年10月~10年9月)の国防予算案は5338億ドル(53兆383億円)で、09会計年度に比べて4%増加した。

沖縄に駐留する海兵隊約8000人のグアム移転に伴うグアム基地の強化費用3億7800万ドル(375億5800万円)も初めて盛り込まれた。今回の予算案は、ゲーツ国防長官が4月6日に発表した主要な兵器システム調達の見直しを反映し、アフガニスタンなどでの対テロ戦を重視した内容に「組み替えた」(国防総省)のが特徴だ。

これに伴い、最新鋭ステルス戦闘機「F22ラプター」や新型護衛艦の調達を取りやめる一方、ヘリコプターや無人偵察機への支出を増やした。共同開発中のステルス戦闘機「F35」の購入も加速させる。ミサイル防衛関連は、前年度比約13%減の78億2600万ドル(7775億9100万円)。多弾頭型の迎撃ミサイル開発など、不急の事業を廃止・縮小する一方、イージス艦6隻をミサイル防衛用に新たに改修するなど、北朝鮮やイランを念頭に、中短距離ミサイルへの対応策を強化した。

海外での対テロ戦の予算案は、本予算案と別に前年度並み(補正予算含む)の1300億ドル(12兆9168億円)を要求した。(2009年5月8日 読売新聞)