再び、「海賊対策」は「海賊」対策にあらず
「海賊新法」の衆議院通過が決定的になった今日、「海賊対策」と称した陸上自衛隊の「中央即応連隊」の「派遣」方針が明らかにされた。
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ソマリア沖海賊:「中央即応連隊」派遣へ 会見で陸幕長毎日新聞 2009年4月23日
陸上幕僚監部の火箱芳文・陸上幕僚長は23日の記者会見で、東アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、派遣予定の海上自衛隊のP3C哨戒機の警備や拠点施設の管理のため、緊急事態や国際平和維持活動(PKO)に対応する精鋭部隊「中央即応連隊」(宇都宮市)を派遣する方針を明らかにした。同部隊の海外派遣は初めて。
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日本政府、麻生自公政権は、ソマリアの「海賊」問題を最大限に政治利用し、一方で改憲論議を回避しつつ憲法九条体制を「守り」ながら、他方で憲法九条の規範原理の最終的解体に向けた動きを加速している。航空自衛隊による空爆や海上自衛隊による砲撃の前段階として、自衛隊の海外における武力行使の実戦部隊が「中央即応連隊」であるからだ。
今回、陸上幕僚長は「中央即応連隊」の派兵理由を「海上自衛隊のP3C哨戒機の警備や拠点施設の管理」としているが、ゲリラ戦や対テロ戦に備えて特殊訓練を積み重ねてきたこの連隊を、なぜあえて出動させる必要があるというのか。明らかにこれは、アフガニスタンの「軍民協力」部隊=PRT(地域復興チーム)、国連スーダンミッション(PKO)、あるいは今年中にも組織される可能性がある再度の「国連ソマリアPKO」など、陸上における「治安維持」部隊への自衛隊の「派遣」を念頭に置いた動きとしてみるべきである。
ぼくは、二〇〇六年の年末に出版した『国家・社会変革・NGO』の中の「人間安全保障・植民地主義・NGO」と題した論文において、ブッシュ-小泉政権による安保体制の再編の本質が「対テロ日米共同作戦態勢の構築」にあると述べたが、麻生自公政権の下の「新日米安保宣言」構想において、これがいま「海賊対策」という大義名分によって実戦化されようとしているのである。
「海賊新法」をめぐる国会論議や新聞ジャーナリズムの「社説」において決定的に欠如しているものこそ、主権者の意思を問うことなく「永遠の安保」の下で着々と進むこうした「安保のグローバル化」の実態なのである。