泊3号機の「営業運転再開」は、停止中原発の再稼働の不吉な序曲
高橋はるみ北海道知事が、昨日、泊原発3号機の「営業運転再開」を容認する意向を正式に表明した。
私はこの間、原発は「安全」だから建設されてきたのではないし、「危険」だから廃止できるのでもないこと、また「3・11」以後においても、「安全」だから再稼働されるのではないし、「不安全」だから再稼働を阻止できるのでもないことを訴えてきたが、政府が言う「ストレステスト」の基準さえ満たしていない泊原発3号機の「営業運転再開」の立地自治体による承認は、憂鬱なこれらの仮説を、きしくも証明するものとなった。
この事態を受け、これから秋、そして秋から冬にかけ、各地の停止中原発の再稼働に向けた怪しい動きが、にわかに活気づくことになるだろう。
「3・11」から5カ月余り。脱原発派の本格的な試練が始まろうとしている。
〈泊原発3号機の「営業運転再開」から何を教訓化すべきか〉
①「原子力安全庁」の評価をめぐって
まず、敗戦記念日に閣議決定された「原子力安全庁」の評価に引き付けて言えば、原発の管轄官庁が経済産業省から環境省に移行したところで、そのこと自体は何ら原発の「科学」的かつ「工学」的な「安全性」を担保するものにはならない、ということである。
泊原発の場合、道庁、道議会、立地自治体は、道内の研究者たちが、道議会産炭地域振興・エネルギー問題調査特別委員会の開催を前に発表した「緊急声明」の内容を完全に無視・黙殺する形で、営業再開容認に踏み切っている。
重要なのは、元道環境審議会会長の吉田文和北大大学院教授(環境経済学)を始めとする研究者たちは、営業再開そのもの反対したのではなく、「無条件の営業運転開始は容認できない」として、「安全」を確保するための条件をクリアせよ、と要求したに過ぎないことだ。北海道新聞によると、吉田教授や干場信司酪農学園大教授たちは、
① 安全協定の範囲拡大、
② 泊原発の沖合に存在が指摘されている活断層などについて、第三者機関による調査・検証の実施、
③ 2~4年後までに実施するとしている北電による安全性向上対策の前倒し、などの5項目を「営業運転再開の条件」とするよう求めたわけだが、 市民の「安全・安心」を保証する必要最小限度の条件とも言うべきこれらの内容が、道・議会・立地自治体(およびその議会)によって無視・黙殺されたのである。
私は、3号機営業再開容認問題が持ち上がった直後に、「高橋知事は、少なくとも「ストレステスト」の実施とその結果が判明するまで、という条件の下に、泊3号機の営業再開にストップをかけることができるし、そうすべきだろう。「地元4町村」の首長たちにしても同じである」と書いた。 吉田教授たちの「緊急声明」の内容と同意見である。(⇒「泊原発が危ない!」の末尾を参照)
また、北海道新聞の社説、「泊最終検査 道民の理解得られるか」は、
「道民の不安を解消することが最優先である以上、3号機をいったん停止させ、さまざまな安全審査を待つことも選択肢の一つになるのではないか。 最終検査は、原発の設備の状態をデータで確認する程度の形式的なものにすぎない。 中ぶらりんの状態は解消すべきだが、それを出来レースのような手続きで済ませるのは誠実なやり方とは言えまい。 ・・・北電は、道民の議論の材料として、道内企業の自家発電設備も含めた電力供給能力、必要な節電の程度など詳細なデータを公開すべきだ 」
「これまで試験運転の継続を放置してきた保安院が、検査忌避の疑いまで持ち出して、北電に検査申請を促すのは奇妙だ。 経産省は停止中の原発の運転再開を急いでいた。その突破口として期待していた玄海原発の再稼働が暗礁に乗り上げた直後である。 泊3号機を、福島の事故後に定期検査から営業運転を再開する最初の原発と位置づけ、再稼働に弾みをつける意図があるとしたら、国民軽視もはなはだしい」 と書いていた。
要するに、「ストレステスト」もヘッタクレもクソもない。
「何でもアリ」なのだ。