民主党のアフガン政策を問う
選挙が近づくにつれて、民主党は外交・安保政策における「現実主義」路線への傾斜を、ますます強めるよう
になっている。その表れの一つが、対アフガン政策の転換である。
民主党は、今年の二月、「アフガニスタン安定化策」の素案なる文書を明らかにした。⇒アフガニスタンの和平、あるいは「平和構築」?をめぐる断章 No.2を参照。
素案の要点は、「国連にも働き掛け、アフガンに軍隊を駐留させる米国など関係国と、反政府武装勢力タリバンの双方に戦闘停止を要請。アフガンとパキスタン国境地帯から米軍、北大西洋条約機構(NATO)軍、パキスタン軍が撤退、代わりに日本を含む複数国でつくる国際停戦監視団が現地に展開する構想だ。日本政府がホスト役となり、和平実現に向けた国際会議を東京で開催することも想定している。」というものだった。
確かに、現在展開されている戦闘の停止を実現することは、容易なことではない。しかし、それがどのような形になるにせよ、タリバーンを含むすべての武装勢力と米軍、国軍、有志連合軍間の戦闘行為の停止と和平合意を模索する方向においてでしか、アフガニスタンの人々の平和な暮らしを回復する道を切り開くことはできないだろう。
今月二〇日の大統領選までの間に、タリバーンや反政府武装勢力を虐殺し続け、一時的に勢力を弱体化させることはできるかもしれない。けれども、その後はどうなるのか。武装勢力を一人残らず殺すまで、対テロ戦争を続けてゆくというのだろうか。
ブッシュ政権の対テロ戦争を継承し、カルザイ政権への軍事・経済援助の増大と米軍の大量増派を両輪とするオバマ政権の対アフガニスタン「包括的新戦略」が、イラクでそうあったように、ただ戦争の長期化をもたらし、一般市民や地方部の農民たちの犠牲を拡大することになるのは明らかである。だからこそ、困難ではあっても和平の模索が、あくまでも追求されねばならないと思うのである。
結局、民主党は、自・公政権の下で推進されてきた「復興支援」をそのまま踏襲する、と言っているに過ぎない。自衛隊の派兵を当面は見送るにせよ、「民生、復興支援」の強化や「治安が比較的安定している地域への政府職員や民間人を中心とした人的貢献の拡充」は、すでに開始されている取り組みであって、そこに何の新しさもないといわざるをえない。
政権交代がなければ、何も変らない。しかし、政権交代しても何も変らない・・・。少なくとも、安保やアフガン情勢に関する限りは、そう言えそうである。そうはならないように、ぼくらに何ができるか、それこそが問題である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
対米外交、給油に代わり復興支援 民主党、オバマ氏に9月伝達
2009年8月9日
民主党は9日、衆院選での政権交代を前提にした対米外交の基本方針を固めた。インド洋で給油活動に当たる海上自衛隊を来年1月で撤退させる代わりに、アフガニスタン本土での民生、復興支援を強化。陸自派遣は見送り、治安が比較的安定している地域への政府職員や民間人を中心とした人的貢献の拡充を検討する。新首相就任を想定する鳩山由紀夫代表が9月の国連総会出席のための訪米時にオバマ大統領と会談し理解を求める。
民主党が掲げてきた(1)在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)削減(2)日米地位協定改定(3)米軍普天間飛行場の県外移転―の3項目についても、直ちに交渉入りは求めない。米国との「信頼関係の構築を優先」(鳩山氏)させる観点から、さらに「現実路線」へ踏み出したといえる。
直嶋正行政調会長は共同通信のインタビューで給油活動の代替策について「自衛隊をいきなり陸に上げるのは難しいが、民間を中心に民生部門で支援できることはある」と指摘。思いやり予算削減など3項目についても「いきなり交渉のテーブルに乗せて『変えてくれ』というようなやり方はとらない。まずは信頼醸成だ」と述べた。
前原誠司副代表も9日のテレビ朝日の番組で、「(米主導の)『不朽の自由作戦』(OEF)は泥沼化している。復興、民生支援に軸足を移す時に来ている」とした。
民主党は、アフガン安定化に向けて、道路、水道などのインフラ整備や、治安回復のためのアフガン国軍・警察の増強に対する人的、財政支援を検討。11月に予定されるオバマ大統領の来日時までに、給油活動の代替策としての支援メニューを詰める方針だ。(共同)