2008年6月24日火曜日

第5回 新たな「産軍学複合体」をめぐる論点整理

2008年公開市民講座戦争マシーンを止めよう! ~「産軍学複合体」の現実に迫る~

第5回 新たな「産軍学複合体」をめぐる論点整理

 3月より4回にわたり行ってきた連続講座の中間総括として、日本における新たな「産軍学複合体」の現実に切り込む糸口をどこに求めて行くかについて考えます。
 この間の講座で毎回議論になった問題の中に、憲法9条と「世界の中の日米同盟」下の安保体制の現実との関係をいかに捉えるのか、という問題があります。たとえば、ミサイル防衛システムの配備が「外部」からのミサイル攻撃に対する日本の「自衛権」によって正当化され、ミサイル攻撃も「自衛権の行使」によって事実上可能となったことや、宇宙基本法も「宇宙の平和利用」を定めた1969年の国会決議を残したまま、「防衛」概念を操作し、日本国憲法の「平和主義」と抵触しないとする解釈によって制定されたことなどが指摘できます。つまり、「戦争国家化」をめざす政策のすべてが「憲法違反にならない」という解釈の下で強行されてきたのです。

 これまで私たちは、このような強引な政治手法が「解釈改憲」であると批判してきたわけですが、もはやただそう主張するだけでは「ただ憲法解釈が違うだけだ」とする、新たな「産軍学複合体」の推進者たちの論法に抗しえなくなってきています。明文改憲することなく海外での自衛隊の「武力行使」も、「集団的自衛権の行使」も実質的に可能になり、あとは「政治判断」のみで処理されうる危機的状況に、いま私たちは直面しているといえるのではないでしょうか。

 もちろんだからと言って、憲法9条の平和原理を守るたたかいの意義がなくなるわけでは決してありません。地域からその実現をめざすたたかいが今日ほど求められている時代はないといえるでしょう。問われているのは、上記のような現実を冷静に見すえ、沖縄・横須賀・岩国をはじめとする全国各地の「基地の街」、ミサイル防衛システム(PAC3)配備に反対する各地のたたかいとつながりながら、宇宙基本法制定後の今後のたたかいを構想することにあると考えます。
 今回の講座を新たな「産軍学複合体」の台頭に抗するこれからの取り組みに向け、これまでの講座の論点を整理しながら、ともに知恵を出し合うスペースにしたいと思っています。皆様のご参加を心よりお待ちしています。

■日時: 7月19日(土) 午後2時~5時(1時半開場)  
■発題者: 
石附澄夫さん(国立天文台)
杉原浩司さん(核とミサイル防衛にNO!キャンペーン)
中野憲志(安保問題研究)

■場所: 東京麻布台セミナーハウス3階(大研修室)
(地図⇒ http://kenshu.e-joho.com/azabudai/map.html )
■資料代 500円 ◎講座は9月以降も予定します。追って告知いたします。

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■賛同人: 有賀精一、木村 朗(鹿児島大学教員)、佐原徹哉(明治大学教員)、清水雅彦(明治大学講師)、竹峰誠一郎(大学院生)、田中利幸(広島平和研究所教授)、南雲和夫(法政大学講師)、藤岡美恵子(法政大学・同大学院講師)

■主催: 平和力フォーラム(東京造形大学内・前田朗研究室)

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集団的自衛権の行使容認を提言 安保法制懇が報告書2008年6月24日

 首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)は24日、米国に向かう弾道ミサイルを迎撃できるようにするなど、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認するよう求める報告書を政府に提出する。

 同懇談会は、安倍首相(当時)の肝いりで昨年4月に設置。安倍氏は(1)公海上で行動をともにする米艦船への攻撃に対する応戦(2)米国に向かう弾道ミサイルの迎撃(3)国際平和活動をともにする他国部隊への攻撃に対する「駆けつけ警護」(4)国際平和活動に参加する他国への後方支援――の4類型を示し、検討を指示していた。  報告書では、4類型すべてを可能とするよう提言。そのために、(1)と(2)については集団的自衛権の行使を認め、(3)と(4)については「海外での武力行使」や「他国軍の武力行使との一体化」にあたるとしてきた従来の憲法解釈を変えるよう求める。

 ただ、福田首相は集団的自衛権の行使に消極的。政府は報告書のうち、自衛隊海外派遣の恒久法(一般法)にかかわる(3)と(4)について、今後の議論の参考とする考えだ。 懇談会は、福田政権誕生後は一度も開かれていない。政府は一時、集団的自衛権に踏み込まず、(3)と(4)を核とした報告書をまとめられないか、懇談会側と水面下で打診したが、集団的自衛権行使の容認論者が大半の懇談会側と調整がつかず、懇談会が半ば「見切り発車」する形で報告書を提出する。 (朝日新聞)